四章

第70話 変革ですか?

 大陸を二分していた二国。


 王国と自由連邦国。


 王国軍が秘密裏に隠していた大型破壊兵器が連邦国に敗れ。


 更には万年不落要塞である『要塞都市ゲビルグ』も破れ、王国軍はかつてない程に疲弊した。


 『要塞都市ゲビルグ』が陥落された日の事を、――――『絶望が降って来た日』として記録された。


 理由は分からないが、全ての要塞都市民達は原因を語ろうとはしなかった。


 ――あれは、きっと夢だった。


 そう話していたのだ。



 『絶望が降って来た日』から一年。


 多くの事が起きた。


 まず、大きく変わったのは、連邦国の領主である『ヘルド・イクサ』が連邦国に対して反旗を翻した。


 それも、隣領の『ペデル領』と共に。


 その事により、中央山脈の『要塞都市ゲビルグ』から左右に王国と連邦国と対峙した。


 それからたった十日足らずで、ヘルドは連邦国の全領を占領した。


 何故それほど早かったのか。


 ヘルドは――――かの悪夢である『大型破壊兵器ヴァレンシア』を引き連れていたからである。



 連邦国が消滅し、『ヘルド大総統』率いる『自由国』と名付けた新しい国が出来上がった。



 元々英雄として『自由連邦国』内では絶大な人気があったのも相まって、直ぐに『自由国』の国民達は現状を受け入れた。


 多くの法改正が始まり、『自由国』は『自由連邦国』の頃とは比べられない程、平等な社会を実現していた。


 それも、カリスマ的な存在である『ヘルド大総統』と共に、法の父と呼ばれるようになる『ディレン・ペデル法務大臣』の力が大きかった。


 多くの領で、優秀な者達が、次々それぞれの『大臣』となり、『自由国』をより良くする為に奮闘しており、腐った貴族は次から次へと粛清されていった。



 『自由国』が出来上がり、たった半年で完璧な政治地盤を固め、今度は『王国』に向かって出陣した。


 王国もまた、たった半年で、白旗をあげ、全面降伏したのである。


 ――――誰も『大型破壊兵器ヴァレンシア』を止められなかった為である。


 無条件降伏により、王国もまた消滅する事になった。



 しかし、ここで一つ不思議な事が起きる。


 それは王家の失踪である。


 今まで王国を牛耳っていた王と、その長男となる王太子が、忽然と姿を消してしまったのだ。


 多くの人々は国を捨てて、逃げたと判断した。


 それから次々腐った貴族達が粛清され、数少ない善良な貴族が数人『自由国』に雇われる形となった。



 こうして、『絶望が降って来た日』から一年。


 瞬く間に大陸の二国は、新生国によって崩壊を迎え、大陸に新たな国が誕生し、大陸は平和になったかに見えた。


 それから更に半年が経ち、建国一周年。


 『ヘルド大総統』の演説が終わり、『自由国』は平和をより強調した。


 だが――――その直後の事であった。



 北側の山脈の向こうから大きな爆発が起きた。


 爆発は『自由国』に何かの被害を与えた訳ではなかったが、次の戦いが待っていると言わばかりの印象を与えた。

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