第63話 要塞都市の絶望
「こ、この! 役立たずが!!!」
ヴァイクは隣にいたユーリを殴り飛ばした。
「『大魔法』があんなもんで防がれるなんて! お前の不出来の所為だ!!」
既に疲れ果てていたユーリはそのまま気を失うも、ヴァイクは構わないと彼女を踏み続けた。
◇
「流石のヴァイクでも、この現状には慌てているな。まさか――『大魔法』があんなにあっさり防がれるとは思いもよらなかっただろう」
ヘルドさんの言う通り、お父様が驚いているのが遠目でも分かるくらいだった。
しかし、その直後、僕には衝撃的な光景が見えた。
お父様が隣の女の子を殴り飛ばしている様子が見えた。
更に怒りながら踏み続ける仕草が遠目で見える。
その姿に苛立った僕だったが、
「アレク。彼女も覚悟の上で戦争に参加している。お前が助ける責任はない。放っておけ」
「で、でも!」
「でももくそもねぇ! あの女の魔法で何人の人間の命が吹っ飛んだと思っているんだ!」
「僕が防いだから――「それは結果論の
僕は自分の中にあるどうしようもなく怒りが込みあがるのを感じた。
そっと、アイリスの手が僕の手を握った。
「気に……しないでと言っても無理だろうね。アレクは優しすぎるもの。だからね。今はぐっと我慢して、これから助け出そう? いま腹を立てても届かないんだから、その怒りを、これからあの男に思い知らせてあげよう?」
ああ、アイリスの言う通りだ。
いま僕がああだこうだと話しても、何も
これから、ああいうことが二度と起きないようにしなければならない。
「ヘルドさん、すいません……」
「分かったんならいい。それより、これからが大事だ。分かってるな?」
「ええ。任せてください。誰も傷つかないように、頑張ります」
そして、僕は怒る心を静まらせながら、要塞都市を見つめた。
今日の為に、う~んと貯めた
「スキル!! ゴミ召喚!!! ゴミ流星群・連打!!!!!」
僕達の上空に緑色の
前回のゴミ流星群の数倍にも及ぶ数の緑のそれは、僕の合図と共に要塞都市目掛けて落ちっていった。
◇
『要塞都市ゲビルグ』はその頑丈さから、一度の敗北もないまま、時代の最強砦として有名である。
その都市に住んでいる人々もその安全さから、自分達がそういう場所に住んでいる自負があった。
そんな最強砦の都市は、現在……。
都市中に響き渡る悲鳴。
助けてくれという言葉と共に、人々は元気良く走り回っていた。
怪我をしている人は誰一人いない。
しかし、全員が手で口と鼻を抑え、目も開けられぬほどの激痛の
この日。
『要塞都市ゲビルグ』は絶望の一日となった。
空から降り注ぐ緑色のそれは、想像を絶するほどの悪臭を放った。
防ぐ術はない。
空から次々と飛んできて、都市を包み込む。
魔法使い達が魔法で対抗しようにも、その悪臭で集中出来ず、誰もスキルや魔法が使えなかった。
十分。
たったの十分で、今まで開く事がなかった『要塞都市ゲビルグ』の門が開いた。
――――しかし、敵軍である連邦国軍も決して『要塞都市ゲビルグ』の中に入ろうとはしなかった。
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