第42話 円形城壁ですか?

 ベータ町では、全員が臨戦態勢に入っていた。


 地平線の向こうに、多くの兵士達の姿が見える。


 更に先頭で進んでる若い男性が、恐らく英雄だろう。



 こうして、僕達の初めての戦いが始まろうとしていた。




 ◇




「この町の代表はお前か!」


 少し離れた所に、向こう兵隊から一人、こちらを訪れてきた。


「僕が代表です。皆さんは、どのような要件で、兵隊をこちらに?」


「ふん、お前らに騙されて多くの冒険者が亡くなった! 更にAランク冒険者も再起不能にまでなった! その責任を取り、お前ら全員連邦国の奴隷になる事が決まった!」


 へぇ……もう決まった事案なのね。


「速やかに降伏せよ! さすれば、命だけは――――」


 シュッー


 彼の前に、腐った卵が投げつけられた。


 え!? ちょっと!? 誰よ、あんなもん投げたの!


「いらないわ! 戦うというのなら、あんた達全員、首を落とす覚悟で来なさい!!」


 アイリス!?


 滅茶苦茶怒ってない!?


 向こう兵士は「ふん、覚悟しておけ」と捨て台詞を吐き、本陣に戻って行った。



「アイリス姉! かっこいい!」


「おお! やってやろうじゃねぇか!」


 町から歓声があがった。


 皆……やる気満々みたいね。


 まあ、元々断わるつもりだったし、いいか。




 ブォオオオオー!


 相手側の兵隊から大笛の音がして、兵隊が前進を始める。


 僕達も作戦通りの配置についた。



 第一陣は兵隊vs僕だ。


 兵隊が近づいて来た時、僕は彼らの周辺に『円型城壁』を召喚した。


 先日覚えた新しいスキル『特殊召喚』により、本来ならただ召喚して終わりだったのが、『事象』を付けて召喚出来るようになっていた。


 『城壁』を名付けたのも、本来はただのゴミの塊だ。


 しかし、今の『城壁』は違う。


 本当の『城壁』に匹敵するような壁となっている。


 そして、その『城壁』を『円状』にする事によって、相手を『城壁』で囲う事が出来るのだ。


 第一陣の五十名の兵士達は、突如現れた壁に驚いた。


 でも、悪いけど、一人も逃さないからね。


 僕は、『城壁』を少しずつ狭め、中に『あれ・・』を大量に召喚した。



 ――――うん。


 この世の地獄みたいな叫び声が聞こえてくる。


 ヘルド様助けてくださいー!


 と叫んでいた彼らに逃げる場などない、僕の『円形城壁』内で、全員気を失うのだった。




 ◇




「あいつら、面白いスキルを使うな」


「ええ、まさか、こんな近辺に、こんな人達がいるなんて……」


「ん? ライブラ、お前は一つ、大きな勘違いをしているぞ」


「え? どういう事? ヘルド」


 目の前に突如現れた壁を見ながら、英雄ヘルドは、共に来た美しい女性に話した。


「この近辺は、呪われた森から凶悪な魔物が現れる場所だ。こんな場所にを作るやつらだ。そう弱くはないだろう」


「あ~、あの豚ちゃん? でも、あんなの、ヘルドや私からすれば……」


「それは、俺様達が強過ぎるからな。だが、あれは平民共には恐怖の象徴らしいな」


「へぇ~、あんな可愛い豚ちゃんが、恐怖だなんて…………




 ほんと、平民共には虫唾が走るわ」

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