第40話 何の石ですか?

 次の日。


 僕達はテザイオンさんに言われ、貴賓室で打ち合わせとなった。


 ダークエルフ族との交流の件だった。


 細かい事は全てテザイオンさんに任せるというと、テザイオンさんも苦笑いをして承諾してくれた。


 そもそも、うちのベータ町からダークエルフ族の里に来れるのは、極僅かだからね。



 テザイオンさんから、この『フルーフ大森林』について、教えて貰った。


 どうやら、元々魔素というモノが濃いので、強い魔物が生まれやすいそうだ。


 それは奥に行けば行くほど、濃くなるようで、どんどん強い魔物がいるみたい。


 それと、一つ大きな情報があった。


 どうやら、森の奥には、とある種族が住んでいるそうだ。


 彼らは外部とは一切の交流をしていないので、出会ったらまず離れる事を勧められた。



 里を離れる前に、シグマくんに挨拶をして、シェーンさんにも挨拶に向かった。


 綺麗なゴミ処理場を訪れると、シェーンさんが少量のゴミを燃やしていた。


「シェーンさん」


「あら、アレクくん、いらっしゃい」


 昨日、僕が収集した所為で、処理場のゴミは殆どなくなっているね。


 こうみると、綺麗な家にも見える。


「そろそろ、町に戻ろうかと思ってまして」


「そうだったのね。昨日はゴミをありがとうね」


「いえいえ、こちらこそ、特殊召喚のヒントを貰えて、こちらこそありがたかったです」


 笑顔のシェーンさんの後ろには、昨日の宴会で出た油等のゴミが集まっていた。


 今から燃やすのだろうか?


「シェーンさん、折角ですから、余ったゴミは定期的に収集に来ますから、集めておいてください」


「それは助かるわ。ありがとう」


「では、そちらのゴミも収集しますね? スキル、ゴミ収集!」


 そして、僕は右手を翳し、ゴミ・・を収集した。


 ――と、その時。


 予定外のゴミがもう一つ、収集出来た。


 あれ? このゴミは何処から……?



「えっ!? 何これ……!?!?」


 シェーンさんの顔色が物凄く悪くなった。


「シェーンさん!? 急に顔色が悪くなりましたけど、どうしたんですか?」


「あ……が…………に、お…………く……さ」



 ――――シェーンさんが倒れた。




 ◇




 シグマくんに事情を説明して、シグマくんのお家でシェーンさんを休ませた。


 ベッドの上には、苦しんでいるシェーンさんがいる。


 僕は、一つ、大きな宝石・・を取り出した。


「アレク兄ちゃん! その石は何処で手に入れたの?」


「んとね、さっき、ゴミ収集した時、一緒についてきたんだよね」


「へぇー、それ魔石だよ」


「魔石?」


「うん。魔素の塊みたいなもんだよ。魔法の補助にも使えるし、古代機械を動かす時とかも使えるよ~」


「成程! シグマくんは詳しいのね」


「うん! 僕、大きくなったら、古代機械の研究者になりたいからね!」


「そうか、その時は、僕も手伝うよ」


「やった!!」


 シグマくんが喜んでくれた。


 喜ぶシグマくんの声で、シェーンさんが目を覚ました。


「ううっ……こ、ここは……」


「シェーン姉ちゃん! やっと気がついたんだね!」


 目を覚ましたシェーンさんが、大きな粒の涙を流し始めた。


 あまりにいきなりの出来事に、咄嗟にアイリスがシェーンさんを抱きしめてあげた。



 暫く、泣いた後、落ち着いたシェーンが嬉しそうに話した。




「アレクくん……本当にありがとうね? 実は…………、匂いが、匂いが感じれるようになったの」




 ええええ!?


 僕、何もしてないのに、どうしてそうなったの!?


「あ、もしかして…………アレク、さっき収集したと言っていた魔石って……もしかして、これがシェーンさんの体の中に入っていたから、匂いが感じれなくなったんじゃない?」


 アイリスの言葉に、持っていた魔石を見つめた。


 この石が……


 あのシェーンさんの体の中に……


 おぶっ!


 アイリスに頭を叩かれた。


「痛いよ……またタンコブが……」


「今、アレクが、すっごく、いやらしい、顔、してた!」


 ちょっとアイリスさん、そんなに興奮しないでくださいよ。


 シェーンさんとシグマくんの笑い声に包まれた。




 ◇




「あ、アレクくん……その……本当に申し訳ないのだけれど……」


 シェーンさんがとても申し訳なさそうにしている。


「ゴミ処理場の匂いがきつくて入れないの…………これからゴミ収集を定期的に、出来れば早めに、お願いします……」


 あ、シェーンさん、ゴミの匂いで気絶していたのね。

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