第37話 ゴミ処理場に美女ですか?

「シェーン姉ちゃんは欠陥品なんかじゃないよ!!」


 シグマくんが怒りだした。


 そんな姿をみたシェーンさんが優しく微笑んだ。


「ふふっ、あまりお客様にこういう話をするのは良くないのですが……、ダークエルフ族にはとても大事にされている事があるんです」


 シェーンさんの優しい手がシグマくんの頭を撫でた。


「ダークエルフ族は昔から植物と共に暮らしてきました。そして、もう一つ、大切にされているのが――――『風』です」


「「風?」」


「はい、我々はそれを『恵みの風』と呼んでいます。『風』は我々にとって、最も大事な一つなのです」


 確かに、里中には風車のような飾り物も多くて、風をより身近に感じれた気がする。


「そんな我々には一つ、得意がございます。それが『風の匂い』を嗅ぐことです」


「『風の匂い』を嗅ぐ?」


「はい、例えば、この度の魔物の大軍とかも、先に『風の匂い』で分かったりと、我々の生活にはありとあらゆるモノに『風の匂い』が大切なのです」


 シグマくんに助けを求められた時も、今ならまだ間に合うかも知れないと言っていた。


 あの大軍が迫る前に見つけられたからなのだろう。




「そんな私達に大切にされている『風の匂い』を嗅ぐ事が…………私には……出来ないのです」




 笑顔だった。


 でも僕は知っている。


 その笑顔は嘘の笑顔だ。


「私は、生まれながらに、『鼻』が利きません。ですから、ここにいても何も・・感じないので、生活出来ているのです」


 そうか…………だから、このゴミ場はこれ程、綺麗・・なんだろうね。


 アイリスも何処か悲しそうな目をしていた。


 本人は決して、悲しい事ばかりじゃないと話した。


 食事もしっかり取れるし、元々魔力も低いのに、仕事にもありつけたし、悪い事ばかりじゃないと。




「シェーンさん、ここのゴミは全て処分する予定なんですか?」


「えっ? はい、そうです」


「結構な量ですね?」


「はい……もう少しで、溢れそうなので、そうなったら別な方にもお願いしなくちゃいけないのです……皆さん、呼べばちゃんと来てはくれるのですが、良い顔はしませんから……」


「それじゃ、ここのゴミ、全部、僕が貰ってもいいですか?」


「えっ? ゴミを……貰う?」


 アイリスがとびっきりと笑顔で、シェーンさんに大きく頷いた。


 ――――「彼に任せておいて」と言わんばかりに。



「スキル、ゴミ収集」



 詠唱は必要ないんだけどね。


 誤解を生まないように、詠唱の振りをして、僕は一瞬でそのゴミ場にあるゴミ、全てを収集した。


 その後、驚くシグマくんと、嬉しそうな本当・・の笑顔のシェーンさんがとても素敵だった。




 ◇




 久しぶりに仕事が速く終わってしまったからと、シェーンさんも一緒に外に出て来た。


 シグマくんと共に、アイリスが目をキラキラさせながら僕を見つめてきた。


 頭に犬耳が見えるくらいに、餌を待っている犬みたいね。



 それもそのはずだ。


 何故なら、先程のゴミ収集で、僕の能力『ゴミ箱』のレベルが六から七に上ったからだ。


 その事を、アイリスに言うと、早く新しいスキルと見せろとこういう状態になった。


 よくわからないけど、アイリスに釣られてシグマくんとシェーンさんもワクワクしている。




「分かったよ~試してみるから、でも内容的にどういったものなのかはまだ分からないからね」

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