第23話 脅しですか?

 目が覚めたら、僕がヴァレン町の自分の家だった。


 最初は夢なのかなと思ったけど、『箱』の中身を見ていると、そうでない事が分かった。


 必殺用『分厚い石材ゴミ』が無かっただからね。



 外の出ると、町の皆で宴会をしていた。


「あー! アレク!!」


 アイリスちゃんの声に、町のみんなが僕を見つめた。


 ――そして、「アレク! ありがとう!!」とみんなから言われた。



 ヴァレン町で僕達は束の間の宴会を楽しんだ。

 


「アレクくん」


「シーマくん、遅くなってごめん」


「ううん、助けてくれてありがとう。あのまま居たら、何されたか分からなかったから」


 僕はシーマくんと握手を交わした。


 それを眺めているアイリスちゃんが、ニヤニヤしていた。




 ――――しかし、僕達の安息は、そう簡単に得られるはずもなかった。




「り、リグレットさんはいるか!!!」


 その声は、ルーンさんだった。


 ルーンさんが慌てて、ヴァレン町の入口から走ってきた。


 それを見たリグレットさんは、鋭い目つきになり、ルーンさんの元に走って行った。



 リグレットさんがルーンさんから事情を聞いている間、僕達はアースさんによって集められた。


 聞き終えたリグレットさんが僕達の所に来た。


「予想通り、最悪な状況になったよ。ギャザー町の領主アブ・ノルマルの野郎が、私兵を連れて、こちらに向かって来ている」


 実は、シーマくんの救出作戦の時点で、予想していた事だった。


 しかし、既に僕達には多人数相手の切り札を持っている。


 こうなっても、勝てる見込みがあった。




 ◇




 ギャザー町に続く道路に、現在、多くの兵隊さんがこちらに向かって進軍していた。


 高台から兵隊を眺める僕達。



 一足先にアースさんが、兵隊に向かっていた。



「俺はヴァレン町の町長であるアースだ! この兵隊は一体どういう事だ!!」



 アースさんの声がここまで響いて来た。


 兵隊が止まると、そこから裕福そうな服をきて、偉そうな表情の男が一人、前に出てきた。


 そして、アースさんと何かを話している。


 数回話すと、男が怒り出してる。


 聞こえないけど、何となく、内容が分かるよね。


 それからアースさんがこちらに走って来た。


 向こうの兵士達が物々しい態度を取っている。


 今でも戦いになりそうな雰囲気だ。




 ◇




「いや~ダメだったわ」


「うん、見てれば分かるわね」


 帰って来たアースさんをリグレットさんが溜息を吐きながら返事した。


「それで、例の作戦で行くの?」


 アイリスちゃんがアースさんに聞いた。


「そうするしかないだろうよ。まあ……このままあいつらにこき使われて来たからね。今までの鬱憤が晴らせる良い機会かもしれない」


 アースさん……知らず知らずのうちに、あの領主からのストレスあったみたいだ。


「ねえ、アレク。本当に大丈夫?」


「え? 僕?」


「そうよ、先日あんなに戦っ――――」


「いや、僕は何もしてないし、殆どアイリスちゃんが戦ったからね」


 アイリスちゃんが僕を心配そうに見ている。


「でもアレクくんって、戦いで気絶して帰ってきたよね?」


「え? あ~確かに?」


「アイリスちゃんから「相手の幹部にやられたわ」と聞いたからさ」


 え!?


 シーマくんの言葉に僕は驚いて、アイリスちゃんを見つめた。


「だって、あれって」


「えええええ、ちょっとアレク!」


 それだけで、何が起こったか察してくれたみんなが、大笑いした。


 目の前に戦いがあるのに、みんな笑う程、僕達には余裕があった。


 だって――――。


 あんな大軍、何も怖くないからね。




「さ~て、やったりますか~!」


 僕の声で、みんな「「「お~!」」」と拳を挙げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る