第15話 強襲ですか?

「ピエル、こっちに来るんだ!」


 僕達の前にいたピエルくんが、無抵抗のまま、両親に連れられて強盗達の後ろに行かれた。


「ま、待ってよ、親父! これはどういう事なの!」


 向こうに連れられたピエルくんは両親と揉めていた。



 しかし、強盗達は待ってはくれなかった。


 彼らは僕達に向かって、少しずつ近づいてきた。


「おい、茶髪のガキは生かしとけよ。珍しい才能というからな」


 シーマくんの『錬金術師』もバレているのか……。


 どうしよう……この人達、強そうだしな……。


 こうなったら、逃げ用作戦を実施するしかないみたいだ。


 シーマくんにアイコンタクトを送った。


 シーマくんはすかさず、僕に飛び込んだ。


「スキル! ゴミ召喚!」


 シーマくんが僕にくっついてすぐに、僕は足元の大量・・のゴミを召喚した。



「「「なっ!? 臭っ!?」」」



 そりゃ、ゴミですからね。


 僕はゴミを家の高さ程、召喚して、シーマくんと屋根に飛び移った。


「くっ、お前ら、撤退だ!」


 強盗のリーダーの合図で、強盗達とピエルくんと両親が向こうに消えていった。


 ピエルくん……。



「アレクくん、急いで行――」



 そのとき、シーマくんの声と共に、僕は何か鋭いモノに刺された感覚がした。


 その衝撃と共に、僕は屋根の下に落ちていった。


 落ちる中、屋根の上から僕を呼ぶシーマくんの叫びだけが聞こえた。




 ◇




 パリーーン


 誰もいないはずの厨房から、アレクのコップが落ちて割れていた。


「これは……まさか……」


 アイリスがアレクのコップを片付けているとき、


 アースが慌てて、家に入って来た。


「マイケル爺さん! いるか!?」


「おお、アースさんや、どうしたんじゃ」


「ちょっと不味い事になったかも知れない」


「不味い事?」


 一つ息を整えたアースが続けた。


「――、ピエルくんの両親が消えた」


「なっ!? もしや……?」


「ああ、可能性はある」


 それを聞いたアイリスは更に不安を覚えるのだった。




 ◇




 現在、ギャザー町では大変な騒ぎになっていた。


 何でも、いきなり悪臭がするゴミのが出現したからだ。


 華やかな表道から少し奥に入った裏路地での事だった。


 そのゴミの多さから、既に表道まで匂いが広がっており、大変な事態になっていた。 


 あまりにも突如現れたゴミ山。



 その騒ぎを見ようと、野次馬達が集まっていた。


 その野次馬達の中に、鋭い目をした赤い髪の中年女性がいた。


 さっき程、アレク達に大量のお金を渡したリグレットだった。


 彼女は何かを考え込んで、その場を急いで離れた。



 その直後、兵士達が現れ、その中からふくよかな男が鼻にハンカチを当てて現れた。


「本当に臭いのう、あのゴミ町みたいな匂いや……わしの美しい町に何という事をしてくれたんじゃ!」


 男はゴミ山を見て、腹を立てた。


「おい! このゴミ山を早く片付けろ! あのゴミ町に送ってやれ!」


 それから、ある集団が現れ、慣れた手付きでゴミを収集して、ゴミ山も少しずつ減っていった。



 ゴミ山が現れてから数時間。


 漸くゴミ山の姿は見えなくなり、その跡地には嘘かのように何もなくなった。


 最初から、誰もいなかったと言わんばかりに――。

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