第13話 町ですか?

 ギャザー町は思っていた以上に賑やかだった。


 多くの行商人や冒険者のような人達が多く、出入りしているのが見える。


「ここら辺で一番大きい町だから、人も多いね~」


「お、おう! こんな町、何だってんだ!」


 ピエルくん……、歩く足と手が同じ側で一緒に上がってるよ?


 それを見ていたシーマくんもクスクス笑っていた。


 こんな大きな町、初めてだと緊張するかもね。




 僕達は門番の前に並んでいる列に並んだ。


 ゆっくりと進んでいき、僕達の出番になった。


 シーマくんが預かっていた『ヴァレン町の証』を見せた。


「なっ!? あのゴミ・・町からの子供か」


 門番さんが驚いて声を出した。


 それを聞いた周辺の人達が僕達から距離を取った。


「くっ、『証』は本物だ。さっさと通れ」


 門番さんが鼻を摘んで、シッシッと手を振った。


 ん~、僕達全然臭くないはずなんだけどな……。



「ピエル、アレクくん、うちの町はこういう扱い・・をよく受けるから、急いで先に行くよ」


 シーマくんに連れられ、僕達はその場を逃げるように去った。




 ◇




「くそ! あいつら……」


 路地裏でピエルくんが悔しそうに壁を殴った。


「まあまあ、うちの町はよくある事だから」


「僕は初めてみたよ、あれってゴミの町だから蔑まれてるの?」


「ああ、俺達がゴミを受けてやってるから、この町が綺麗に保てるはずなのに……くそっ!」


 ピエルくんのイライラする気持ちも分かる気がする。



 昔、屋敷にいた頃、屋敷のゴミを回収してくれる人達がいた。


 その人達はスラム街の人達だと教わったけど、決して近づかないようにと言われていた。


 僕は言われるがまま、近づく事はしなかったけど、良くない噂はこういう事に繋がるはずだ。


 自分の目で、耳で、口で、確認もせず、ただただ人を呼ばわりする。


 噂とはそういうモノだ。



「ピエル、いつまでもやさぐれてないで、早く雑貨屋に行こうぜ」


「ちっ、わーったよ」




 ◇




 町を歩けば、僕達は何処にでもいるような子供達だった。


 僕のスキル『クリーン』のおかげもあって、臭い匂いも一切しないからね。


 町の道路を堂々を歩いても、僕達の事を避けようとする人は誰もいなかった。



「ピエルくん! あれ見てよあれ!」


「あん? ――――――、うひょ! あの姉ちゃん、めちゃ可愛いじゃねぇか!」


 そう、僕が指差した先には、可愛らしくて色っぽい雰囲気の女性がいた。


 僕達に気づいた彼女は、


「ふふっ、坊や達にはまだ早いわ、もっと大きくなったらいらっしゃい」


 と言われた。




 はい! 大きくなったら必ず来ます! ここ『クイーンサキュバス』に!




 痛っ! あれ? 痛くない。


 何だかアイリスちゃんにぶっ飛ばされる感覚がした。


 ううっ、こんな所に来ても、鉄槌・・が思い浮かべるなんて……。



 そんなこんなんで、僕達は繁華街を通り抜け、その先にある商店街に進んだ。


 さっきの繁華街と違って、こちらは商品を売っている出店が多かった。


 店と言っても、皆テントを張っているだけだけどね。



 おお~、あの指輪とかネックレスとか、僕の『箱』に入っているモノと同じか~


 売値は、どれどれ……。



 うんうん、指輪が大体、銀貨十枚から三十枚で、ネックレスが、銀貨二十枚から五十枚ね。

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