ラーメンショップショルダースロー
@ritzberry
一杯目 熊本県熊本市 黒髪ラーメン本店
ずだーーーーーーん!
大学近くの窮屈なラーメン屋で、背広を着た痩せた男の体が綺麗な弧を描き、そして大きな音を立てて地面に叩きつけられた。
パラパラパラ・・・
天井の柱からホコリの欠片が雪のように落ちてきて、そこに窓の隙間から落ちた陽の光が回廊を作りラーメン屋の中にまるで宗教画のような幻想的な雰囲気を作り出す。大きな音に店内の音が静止する。
「いっ、一本!!」
アルバイトの女性店員が右手を鋭く上げて宣言をした。柔道部員なのだろうか、思わす出てしまったといった様相で手を下ろすのと同時に赤面して後ろに引っ込んでしまった。そしてそれを合図に静止していたラーメン屋が息を吹き返した。
「たしかに俺も未熟だった。だけどあんたもあんただ。大変お世話になりました!これまでありがとうございました!あとラーメンもごちそうさまでした!!私物は後で取りに伺いますっ!!!」
奇跡のような絵面の中心にいた男が大きな声で宣言をした。
研究上のゴタゴタで研究室を飛び出した(そして指導教員にサヨナラの背負投をした)この男は、この先背負投一本で自身の守るべき小さな研究室を手に入れる。これはそんな物語の始まりのお話。
黒髪ラーメン本店のラーメンはその店舗からは想像できない上品な豚骨ベースの醤油ラーメンである。アクセントのマー油は自家製。同じく自家製のチャーシューは学生街にふさわしい厚さで提供される。味玉は常にサービス。おすすめのラーメンは店舗の名を冠する黒髪ラーメン、650円。他に辛味の強い赤髪ラーメンは700円、これでもかと白ごまが踊る白髪ラーメンは700円が人気。入り口が分かりづらいので学会等で訪れるときには地元大学関係者に確認しておくのが吉。
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