Death Bringer.
うゆちゃん
プロローグ
俺はあの日、死んだ冒険者の成れの果てを知った。
旅の果てには掛け値無しの絶望があるだけだった。俺達冒険者は今まで冒険者ギルドに踊らされていたし、これからも踊らされていくのだ。
真実と対峙して俺は思考停止し、ただ死ぬのが恐ろしくて逃げた。仲間を守る筈のウォリアーが仲間を置き去りにし猪の一番に逃げ出したのだ。
俺は魔物達からも、冒険者ギルドの追っ手からも逃げ続けた。その過程で俺の手の中からあまりにも多くの物が零れ落ちていった。
それから俺は名を変え、顔を隠しフリーの冒険者として日銭を稼いでいる。腐っても魔王を倒したメンバーの"元"
冒険者ギルドが腐敗し切っていると知っていながら、冒険者ギルドの仕事をこなし、冒険者ギルドから金を受け取っている自分に反吐が出るような気分で毎日を過ごしていた。
しかし俺に自分の命を投げ出す勇気があるなら、あの時仲間を護って死んでいる。
仕方がないと自分に言い聞かせる。
俺はあの日、人類の脅威である魔物を冒険者ギルドが作り出しているという真実を知った。
魔王の正体は、魔王を倒した"以前の勇者"だったのだ。
考えてみれば、効率のいいシステムだ。
最強の魔物を倒せる冒険者を宣伝に使い倒した後は"退場"して貰った方が、仕事を斡旋する冒険者ギルドにとって都合がいい。
冒険者ギルドの仕事は、人間と魔物のパワーバランスが保たれていて初めて成り立つのだ。
だから魔王を倒しても魔物は滅びないし、強大な、そして人類共通の敵で在り続ける。
むしろ、そうでなくてはならない。
そして、依頼に失敗した冒険者からは魔王も裸足で逃げ出すような損害金や借金の"取り立て"が行われる。人間側が強くなりすぎても冒険者ギルドにとっては美味しくないという訳だ。
忘れたい、何も考えたくなくて酒瓶をらっぱで呷る。何も知らないただの雇われ脳筋ウォリアーだった頃に戻りたかった、頭がアルコールでブッ壊れるまで酒を飲んでもそれは敵わない。むしろ日を追うごとに、繰り返し繰り返し、記憶は鮮明に刻み込まれる。
困難から逃げ出した時どうなるのか、本当は嫌というほど分かっている。何倍にも膨れ上がったツケを払わなきゃならなくなるのだ。
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