甲斐性なしの青春録
てんし
プロローグ
何回も言われたことがある。
「それくらい我慢出来ないの?」
「世の中にはもっとつらい人がいるんだよ」
「我儘ばかり言わない」
何故他人の天秤で、自分の悩みの重さを量られなければならないのか。本人が「つらい」と言ったら、もうそれは周りと比べる意味なんかないのではないか。
人間、誰しも悩みや不安を抱えている。悩みのない人間なんて存在しない。皆、大なり小なり何か抱えているものだ。
ただやはり、その〝大なり小なり〟は傍観者側の物差しで測ったものでしかなく、実際のところは当人にしかわからない。例え自分の目では軽く小さくちっぽけに見えたとしても、決して当人の前でそれを軽視するような発言はしてはいけない。
俺も絶対しないよう心掛けているし、そういうことをする奴は本当に許せない。前々からそうだったのだが、あの会を経験してから、それがより顕著になった。
俺自身、過去に散々な目に遭った。それで、俺の心根は酷くねじ曲がり歪んでしまった。周りの人間が誰も信じられない。信じるだけ無駄だ。人は支え合って生きているなんて絵空事に過ぎないんだ。もうこんな世界で生きたくない。
当時はそんなことばかり考えていた。それでも俺は、母親や当時に知り合った後輩の存在あって、少しずつ前を向けるようになった。しかし、未だ俄に何をするにも及び腰で、人を心の底から信用することが出来ない。だから、人と関わること自体疲れるし面倒臭い。
そんな俺だったが、あの会に入って、確かに変われたんだ。
──これは、とある〝甲斐性なし〟たちが織り成す、少し変わった青春群像劇。
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