第6話
美貴子は板橋のマンションの自室に戻ると、すぐさま透に電話した。
「透、今話せる? 忙しいならまたにするけれど」
バーは今、営業時間中だ。
「今平気。それより、さっきまで琢磨がうちの店に来てたぞ。栗、お土産にもらっちゃった。甘露煮にしようと思うんだけど、おまえも要る?」
「ねえ、そんなことよりバスで人が死んでいたの!」
興奮気味に美貴子は事の顛末を伝えたが、
「へえ、そりゃ災難だったな。で、琢磨なんだけど、あいつイケメンだろ? どうだ?」と、透は遺体の話はスルーして、別のことを言い出した。
「どうって……」
「あいつ、結構いいやつだし、おまえと合うんじゃないか」
「男と女の話? 事件が起きて警察もいっぱい来て、そういう雰囲気も立ち消えてしまったわ」
「ということは、事件が起きるまでは良い感じだったのか? なあなあ、連絡先って交換したか?」
実は名刺をもらっていたが、美貴子はそれを隠した。
「なんだ、交換してないのか。あいつ、おまえのこと結構気に入ったみたいだったけど、案外オクテなのかね」
透はため息をついた。
「しょうがねえな~。俺が一肌脱ぐしかねえな~」
「ねえ、透、そういうのは放っておいて。それより人が死んでいて、あれって殺人なんじゃないかって私思うの……」
「明後日の夜、うちの店に来いよ。琢磨も栗の甘露煮を受け取りに来るし」
「透、私の話を……」
「じゃあ、俺は栗を仕込むので忙しいんで」
そこで通話は切れた。
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