炎が心を照らす時、魂は轟く
天森
燃ゆる瞳、凍える心1
俺は誰かにヒキガネを引かせたい。それは拳銃の引き金と言う訳ではない。俺の行動がきっかけで誰かの瞳に炎を灯したい。なぜかって?それは俺には夢や希望がなかったからだ。金も無く知識もなく孤独でもあった。その時の俺の目は灯が消えていただろう。
ただ一つわかったことは、逃げる事も時には大切だが、挑戦することや、誰かに出会うことを恐れて逃げているだけでは、祝福は訪れないということだ。
心にはいつも重たい霧がかかっていた。生きる理由なんてわからなかったし、明日が今日と違うなんて想像すらできなかった。金でも、思いでも、愛でもいい。何かにすがることで、かろうじて前に進んでいた。
だから、俺は他人にそれを見つけさせてやりたいと思った。 俺が与えられなかった炎を、誰かの中に灯すことができれば、それが小さくても、希望の光が心の中に生まれる瞬間、それは確かに生きる証になる
だが、その「炎」は自分の中にも宿っている。 赤、青、緑――その三色の炎を俺は自由に操ることができる。 赤は攻撃、青は守り、そして緑は癒しの力を持っていた。 しかし、俺はその力を長らく封じてきた。
あの日、いつものように街を歩いていた俺は、奇妙な感覚に迷った。 雑踏の中で、ぽつんと、他とは違う沈黙が漂っている。ベンチに座っているひとりの女がいた。
彼女の目には、かつての私と同じ、色のない瞳が映っていた。 まるで、世界からすべての消えたかのように、彼女だけが無音の中に取り込んでいた。肩をすくめてこまっているその姿は、助けを求めているようには見えなかった。
「寒くないか?」私は声をかけた。
彼女は一瞬驚いたように顔を上げたが、すぐに視線をそらした。 その顔には、痛みと孤独がはっきりと刻まれていた。
「放っておいて。」彼女はぽつりと言った。
「そう言うなよ。俺も、同じように誰にも気づかれたくなかった時間があったからさ。でも、誰かが気にかけてる」
彼女はしばらく黙っていたが、瞳の奥にかすかな変化が見えた気がした。
「どう…助けようと思うの?」
正直なところ、明確な理由はなかった。ただ、彼女を見ていると、かつての私自身を思い出し、放っておけなかった。
夕日が沈みかけ、空は柔らかいオレンジ色に染まっていた。 公園は静まり返り、周囲には俺たち以外誰もいなくなっていた。
「…本当のところ、君を放っておけなかったのは、俺自身が特別な力を持っているからかもしれない。」
望は少し顔を上げ、不安げにこちらを見た。 俺は手をかざし、空に向かって炎を灯した。 赤い炎が、私の掌から静かに、周囲に淡い光を放つ。
「俺は、炎を操ることができる。赤い炎は攻撃、青の炎は守り、緑の炎は癒しの力を持っている。だけど、この力のせいで、ずっと孤独だったんだ。 「私を恐れ、遠ざけた。でも、君にはこの力を使いたいと思った。」
望はその赤い炎を驚いた表情で見つめていたが、静かに語り始めた。
「…私も、少し似ているのかも。私には氷の魔法がある。でも、そのせいでずっといじめられ続けてきた。冷たくて、周りのみんなから気味悪がられた。誰も…私を受け入れてくれなかった。」
その言葉には、深い悲しみと孤独が込められていた。 彼女の話を聞きながら、私の心の中で何かが共鳴した。 望は私と同じように、異質な力を持っていたため、疎外されていたのだ。
「氷の魔法か…。」 俺は少し考えた。 「確かに、炎と氷じゃ真逆だな。でも、どちらの力も必要なんだろう。お互いを補い合うことができるはずだ。」
望はその言葉に驚くようなのだった。 彼女にとって、自分の力が「必要なもの」として肯定されることは、今までなかったに違いない。 少しの沈黙が続いた後、彼女
「…あんな、思ったことなかった。ずっと、私の力は邪魔なのに思ってた。」
「そんなことない。」俺は静かに答えた。
望は少しだけ微笑んだ。 それは、長い間彼女が見せたことのない微笑みだったのかもしれない。
「ありがとう…」
望が微笑んだその瞬間、遠くから不快な声が聞こえてきた。
「おい、見ろよ。あいつ、またここにいるぜ。」
「ほんとだよ。毎日同じ場所でひとりぼっちかよ。さすが氷女、冷たくて誰も近づかねぇけど?」
男の笑い声が大きくなる。女の子たちも一緒にクスクスと笑い、その軽蔑の色が強くなっていきます。
望は、その声が耳に入った瞬間、微笑んでいた顔が一気に曇った。 過去に何度も浴びせられてきた昨日の暴言が、まるでそのことのように心に蘇る。その対策としてヘッドホンを鞄から取り出し装着する。
音楽が彼女を守ってくれる唯一の盾だった。 いじめっ子たちの声を遮断するために、彼女ができる最も簡単なこと。 しかし、しばらく完全には逃げ切れない。と浸透してくる。
「おいおい、耳塞いでるぞ。また怖い怖い氷の魔法でも見せてくれんのか?」
「やめろよ、凍らされるぞー!あ、でも俺達の方が温かいかもな、あいつには近づきたくないけどさ!」
彼らの声が望を取り囲むように響き渡ります。彼女の肩は、ヘッドホンをしていてもさらに縮こまり俺はその様子を見ていると、拳をぎゅっと握りしめ、焔の顔をじっと見つめていた。
「大丈夫だ俺がなんとかする」
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