最初の婚約者は、山登りが好きな変わりものだった。


 そんな趣味があったから、逆に貧乏だった私でも婚約できたのだが、婚約関係は数週間ももたなかった。


 ある日、小さな山に向かってきり、帰ってこなかったからだ。


 おそらく運悪く害獣に遭遇して、食べられるか殺されるかしてしまったのだろう。


 散らばった荷物だけが発見された。





 二人目の婚約者は通り魔に刺されて死亡した。


 外出時に、普段はいかないような道を通ってみたいと、気まぐれを起こしたらしい。


 それで迷子になって、貧民街に迷い込み横から、走って来た通り魔の手にかかってしまったのだとか。


 財布や金目のものをはぎ取られたらしい。


 婚約者の両親は大変ショックを受けて、今も家に引きこもっている。





 三人目の婚約者は、転落死だ。


 お付き合いしている際に、観光で高台に上ったのだが、彼がもたれた部分の手すりだけが老朽化していたらしい。


 それで、何十メートルもの高さからまっさかさま。


 地面に真っ赤な血の花を咲かせた。


 そこまで来ると、私は顔色が変わらなくなった。


 その様子が不気味だという事で、私の周りから友達がいなくなった。


 四人目と五人目は偶然なのか、二人とも火事に巻き込まれた。


 真っ赤に燃え盛る屋敷のなかで、避難する事もできず眠ったまま死亡したという。


 そうまでしたら私の婚約者は現れなくなった。


 呪われている令嬢として噂が広まってしまったからだ。


 私と関わると、不幸な目に遭うとささやかれている。


 でもそれが本当なら、両親は何ともないのに、なぜ婚約を結んだ相手だけが不幸になるのか。


 友達だって、危ない目にはあっていないではないか。


 婚約者がつぎつぎと死んでいく現状に慣れはしたが、私は呪いなんてものを信じてはいなかった。


 その考えが変わったのは、六人目の時。


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