(-_-メ)和) ナガサと付き合いたいんじゃないのか。

「うほ~、カッコいいなぁ」


 俺のマウスガードを付けたナガサがはしゃいでいる。


「くるりの聖なるご尊顔を隠すなんてと思ったけど、これはこれで隠れている部分を無限に想像できてぐふふふふ」

「もうナガサがミイラになってもイケそうだな」


 グリ高の天使様が、まさかの意外な趣味をお持ちだった。それを見た二俣ふたまたは意外でも何でもなく興奮している。


「ねぇ今から材料買いに行こ~?」

「「いやそれはちょっと」」


 ショッピングモールには無いガチめな工房に行くことを提案されたので、なんとか二俣と二人でなだめる。


「……あ、ナガサ、そろそろ返してくれ」


 そこで俺の“時間制限”が来てしまった。


 手汗が滲んでくる。

 身体が小刻みに震える。

 視界も少しかすみ出した。


「カズくん顔が青くない? 大丈夫? ごめんね」

「いや、ここは人が多いからな。少し派手に“症状”が出ただけだ」


 ナガサから返して貰った“おしゃぶり”をつけると落ち着いた。


「ふぅ」


 まったく情けない話だ。

 韓国に行っていた頃から付け始めた。

 最初は、素顔を晒さずに済むと安心するだけだったが。

 これが無いと、まともに人と話すこともできなくなっていった。


「カズくん」


 ナガサの声。


「わたし用の、ちゃんと発注したんだから作ってね」


 沈んだ俺を引き上げようとしてくれる、気遣いの声。


「分かったよ」

「約束だよ? カズくん小指だして」

「けったいなブラックマウスガードひとつに指きりげんまんいる?」

「だってだって、カズくんとお揃いだよ?」

「クラスのいかつい二人組になりそうだな。あと二俣、お揃いってワードにバーガーのピクルスひたいにつくほど動揺してるけど、けったいなブラックマウスガード装着したズッコケ三人組やりたい?」


 ついでに二俣をイジっておく。


「わたしね、思うんだ」


 ナガサが言った。


「カズくんがひとりで付けてるからみんな話しかけ辛いと思うんだよね。だから、わたしも付けちゃえばカズくんもっとクラスの人と仲良くできるんじゃないかなって」

「二俣、アンタの言うことが少し分かった。ナガサは本当に天使かもしれん」

「今さら気付いたの? でも歓迎するわ。ようこそ約束されたエデンの地へ」

「二人とも帰ってきて」


 珍しくナガサが全面的なツッコミに回る。


「いやこの件に関しては不意の優しさと虚を突く気遣いをやめないナガサが悪い」

「そうよ。いい加減見えない羽根で舞い上がり人間界を光で包もうとするのをやめなさいくるり」

「なんでわたしは褒められつつディスられつつ褒められてるのかな?」

「ところで」


 おかしなテンションが戻ったところで、二俣が訊いてくる。


「そのマウスガード、学校はなんて言ってるの?」

「なにも」

「誰も何も言わなかったってこと?」

韓国むこうにいたときはそのへん自由な学校だったし、日本こっちの北中には半年だけで受験もあったからほとんど通ってなかったし」


 そして高校は。


「なんか入学初日から大遅刻かまして怒られてた女子二人組がいて気が逸れたのか、特に何にも言われなかった」

「「傷口をえぐらないで」」

「というのは冗談で」

「「冗談でえぐってこないで」」

「ははは」


 少し笑ってしまった後、本当のところを話す。


「実際のところ、めちゃくちゃ理論武装していったんだけど、特に何も言われず受け入れられた」

「へぇ~」

「そういうもんよ」


 ナガサは感嘆を漏らし、二俣はぶっきらぼうに言った。


「あなたたちだってそうだったじゃない」

「なにが?」

「普通、ダブった一年生見つけたら詮索せんさくするもんじゃない? なのに、普通に受け入れるんだもの。拍子抜けだったわ」

「逆に不安になるやつな」

「そう、それよ」


 身構えていただけになおさらだ。


「礼儀正しすぎるのも、なんだかなって思っちゃった」

「贅沢な話なんだけどな」

「分かってるんだけどね」


 頷き合う俺たちに、ナガサが言った。


吏依奈りいなとカズくんは似た者同士なんだね」

「「それはない」」

「えへへぇ、怒られちゃったぁ」

「おい、あまりそんな素敵な笑顔を浮かべるんじゃあない。二俣がまた昇天かますぞ」

「―――ハッ!? 誰がこのくらいで、私はそんなチョロくないわ」

「ガッツリ旅立っとったろうが」


 二俣をまたイジッたところで。


 俺ははたと気付いた。


 違うぞ。


 俺がこんなガッツリ前に出てどうする。


 フードコートでの長い食事(ナガサはよく噛んで食べる)が終わり、ナガサがトイレに立ったところで、俺は二俣に切り出す。


「おい二俣、アンタやる気あんのか」

「なんで突如としてそんな体育会形式で怒られてるの私」

「俺ばっかりナガサと話しちゃってるじゃないか」

「ははーんマウント取ってきてるのね。いいわ受けて立つわ覚悟なさい泣かしたろかしゃんオラァ!?」

「違うわ。アンタがヘタレサル山の百合珍獣だってことはとっくのとうに割れとるが、それはそれとして、だ」

「なによ」

「ナガサと付き合いたいんじゃないのか」

「ブフォオ!?」


 けったいなブラックマウスガードが無ければ即死だった。


「サル山はサル山でもスプラッシュマウンテンだったのか。少しは加減しろ」

「やかましいわ! あ、アンタが変なこと言うから吹き出しちゃったんじゃない!」

「付き合いたくないのか」

「詰めてくるわね。くるりとはそういう感じじゃないわ。いうなれば世界なの、宇宙なの。宇宙と共にありたいと願っているのよ」

「スペースマウンテンだったのか。でも本当のところは付き合いたいんじゃ?」

「ゴン詰めじゃない。まぁ冷静に考えると、よく分からないわ。なにせ最初の出会いが強烈だったもの。青天の霹靂へきれきっていうか」

「ビッグサンダーマウンテン」

「いちいち私の心の在り様をディ〇ニーランドのアトラクションになぞらえるのやめてもらえるかしら!?」

「割と強引にコンプリートを狙っていったことは認める」


 とにかく、だ。


「付き合いたいなら応援してやる」

「う……それは、そのぉ……」

「せめてナガサへの当たりを恋する乙女くらいには落としておけるようにしよう。このままじゃあ本当にただの珍獣どまりだ」

「言葉にオブラートをかけなさい何かになぞらえるなりしなさいもういっそデ〇ズニーシリーズでもいいから。泣くわよしまいには」


【続く】


キャラプチ紹介


☆ディ○ニーランドのアトラクション何が好き?


(@*'▽') タートル・トーク

(-_-メ)和) スター・ツアーズ

(吏`・ω・´) プーさんのハニーハント

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