(吏`・ω・´) まことにもうしわけございません。
ショッピングモールに、相楽、くるり、私が横並びで入っていく。
私も相楽も背が高いので、小柄なくるりを挟んでいると妙にバランスが良い。
―――親子連れみたい。
ということは、相楽がだん―――
「なぁ二俣、どこに行くん―――」
「馴れ馴れしく話しかけないでくれるかしら!!?」
「会話のアクセルがピーキーすぎる」
「ごめんなさい。そうね、まずは映画を観るわよ」
「そうか。じゃあ俺は外で待ってるから」
「お父さんも一緒よ!」
「誰がお父さんだ!」
「ええ~、いっしょにプリキュア観ようよぉお父さ~ん」
「ナガサが乗っかるといよいよブレーキが利かなくなるからやめてくれ」
くるりの気持ちは分かっているが(※分かってません)、どうも相楽は今日の重要性を分かっていない(※分かってません)。
と、相楽が私の近くに来て耳打ちしてくる。
「ほんとにいいか?」
「なにがよ」
「ナガサと二人っきりを狙ってるんじゃないのか」
「ふっ……愚問ねその手があったか」
「建前と本音が芋づる式で繋がっとるぞ」
いろいろと断腸の思いで、私はくるりと相楽の席を隣同士にする。
「何を観るんだ?」
「恋愛……映画、よ」
「ホラー映画のクライマックスくらいカッ
よく分からないけど、アイドルが主演の、たぶん少女漫画とかの映画化だろう。
日曜日なこともあって、ほぼ満席の座席につく。
「ナガサ、この原作知ってるか」
「ううん。わたし、漫画はジャンプしか読まないから」
「意外な少年趣味」
くるりと相楽の声が遠い。睡魔。しょうがないよね始発組だし。
「なぁ、二俣―――」
「……」
ああ、映画館あったかい。座席柔らかい。ちょうどいい枕ある。
「……仕方ないな」
「……」
映画が始まると同時に、私の意識は深い闇に落ちていった。
「―――たまた、二俣」
誰かが私の名を読んでいる。やめてよ。その名字、あんまり好きじゃないの。
「そろそろ起きろ」
「……ふにゃ?」
まぶたを開けると、もうエンドロールだった。別に観たかったわけではないけれど、すごく損をした気分だ。
「俺の肩はずいぶんと寝心地が良かったんだな」
「……へ?」
私はそこで、自分が何を枕にしていたか気付いた。
「あ……あ……」
一気に目が覚めた。恥ずかしさに体温が上がる。
「あば……」
「あば?」
見られた? 大口あけてヨダレ垂らして寝てた顔を!?
「あばばばばばば!!!!」
「やかましい! 芥川龍之介か! 黙れ! 座れ!」
「ご、ごめんなさいくるりぃぃぃぃ!!」
「別に謝らんでもいいが筋合いが違うぞ!」
けっきょく騒ぎ過ぎて上映終了2分前につまみ出されましたとさ。
※※
―――で。
「……面目ないわ」
「だいぶ前に潰れてるから心配するな」
フードコートで、私は謝罪会見を開いていた。
「男に免疫がないのになぜ隣に座った?」
「それは違うわ。くるり以外の人間はほぼダメよ」
「極め過ぎだろ。人見知り師範代か」
くるりは今、昼食を買いに行ってここにはいなかった。
相楽は「腹は減ってない」と言ってバニラシェイクをマウスガードの間から起用にストローで飲んでいた。
「どうせ、ナガサと一緒だからって早起きして準備してたんだろ」
「ぐぬっ」
私ってそんなに分かりやすいんだろうか。分かりやすいんだろうなぁ。
「そうだったんだ」
くるりが戻ってきた。トレーにハンバーガーだのホットドッグだのを満載している。
「吏依奈は頑張り屋さんだもんね」
「ひゃっ!?」
柔らかな手が、私の頭を撫でる。
「えらいえらい」
ああ、なんて心地いいのだろう。
「いいわぁ。
「女子のなでなでを受けたリポートとは思えない字面の
「準備してたのはわたしも分かるよ。今日は吏依奈、服も気合入ってるもんね」
くるりにも見破られていたらしい。
「へぇ。いつもこうなのかと思った」
「ぜんぜんだよぉ。せっかく綺麗なのにね」
「はいはいありがとう。あなただけよ綺麗なんて言ってくれるのは」
「いやそんなことはないだろう」
「そうよ相楽くん、別に綺麗なんかじゃ……ん?」
会話の流れ的に、今のはくるりの言葉を肯定した形である。
「はぁ!? どこの誰がクールビューティーよ!」
「そこまで言っとーせんわ! むしろその幻想はお前がお前自身の器量の狭さによって完膚なきまでに叩き潰してまったわ!!」
「器が狭い!? ちゃんとくるりと親友と私の天使様の分が空いてるわよ!!」
「一人分!」
「あはははは!」
くるりが爆笑し、反省会は終わった。
「映画はどうだったの? 私寝てたからほぼ観てないわ」
「俺も右肩が気になって話半分くらいしか」
「まことにもうしわけございません」
反省会まだ終わってなかった。
「ナガサはどうだった?」
「人間関係がごちゃごちゃしててよく分かんなかったね」
「いきなり親の不倫で生まれた義理の姉弟やら取り違えになった実の兄妹やらの関係性が終盤も終盤で出されたものな」
まさかのドロドロ系。
「で、最終的に誰一人結ばれることなく火事で全員死んだからな」
そして脚本の出来が悪い。
「それにさっきニュースサイト見たら、主演のアイドルが監督と不倫してたってよ。公開初日だけど上映中止になるんじゃないか」
「純度100のクソ映画!! 私の反省会いつ終わるの!!?」
「~~~~~!!」
「くるりもハンバーガーにかぶりついた状態で声にならないほど笑わないで?」
そんなに笑いながらなお食べることはやめないくるりは可愛いし、食品を大事しているのがとってもえらい。
「ごくん。吏依奈がかわいそうだから話変えようね―――カズくん」
「ん?」
「今日はカズくんにどうしても言いたかったことがあります」
「くるり!?」
「うん」
それって告は……え? 今ここで言うの? あと相楽は気の抜けた返事は百歩譲るとしてもシェイク飲むのやめろバニラより甘い天使のご神託だぞこの異教徒め。
「カズくん……それ、どこで売ってるの?」
「え?」
「え?」
「え?」
くるりが相楽のマウスガードを指差して言った。
「ナガサは、これが欲しいのか」
「カッコいいなぁって」
まさかの変わった趣味。
「つけてみるか」
「いいの!?」
まさかの食い付き。
「よっ……と、ちょっとナガサには大きいか」
「おおー、すごーい! 強くなった気分~」
まさかの中二病。
「で、カズくんこれどこで売ってるの?」
「手作りだ」
まさかの手作り。
「マスクだと蒸れるから自分で材料とか塗料とか揃えて作ったんだ。市販品には黒がなくてな」
「あ~、それは会社の怠慢だね」
まさかの業界(あるのか?)批判。
ねぇ、くるり。
ひょっとしてだけど。
あなた、相楽のマウスガードがかっこいいから懐いてたの??
【続く】
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