(@*'▽') 母を尋ねて400㎞くらい。
わたし
道で野良猫の背中を追いかけて知らない土地に来てしまったり。
「あれ、お弁当に詰めるおにぎりがない」と思ったら朝食の時なにも考えず食べてしまっていたり。
チャットアプリでメッセージを送る相手が一人ずつズレてたのに、みんなが合わせてくれてなんとなく会話が成立してしまっていたり。
セルフレジで代金を支払い商品を置きざりにして店を出る“逆万引き”なんてしょっちゅうだ。
だから言われる。
「天然だね」
と。
……心外だ、などと思っていた時期もありました。
しかし、もう高校生である。
自分の今までのしでかし、やらかし、しくじりを冷静に省みれば。
どこに出しても恥ずかしい立派な天然でしたとさ。
ごめんなさい関係各位の皆様方。
これからはちゃんとします、と親きょうだい達に謝ったところ、
「瑠璃はそのままでいいんだよ」
と、異口同音に言われてしまった。
お父さんお母さん、お姉さんお兄さん弟くん妹ちゃんよ。
娘・妹・姉をそんなふうに甘やかすのはよくないと思いますぞよ。
でもまぁ正味なところ、ちゃんとしようと思うだけでやれるわけもなし。
友人たちから付けられた“くるり”というふんわりしたあだ名と同じく、くるくるフワフワこの世間を生き抜いていくしかないのだ。
……あんまり上手くはないな。
何はともあれだ。
そんなくるくるでフワフワなわたしが編み出した、日本社会を生き抜くライフハックがある。
それは。
とにかく他人を頼りまくること!
つまるところ、開き直りだ。
それがわたしの生きる道。
だから。
右も左もよく分からない韓国の首都ソウルのど真ん中で迷子らしき男の子を見つけたときも、自分一人で何とかしようなどとは、みじんも思わなかった。
そこ。情けないとか言わないの。
そういえば。
以前、元北中の友達が言っていたことを思い出した。
『中三の時、
まさかのクラスメイトに韓国語が話せそうな人がいた。
よし、と思い、連絡を取ろうと思った。
が、ここで問題発生。
我ながら、顔は広い方だと思っている。
友達の友達までたどれば、だいたいの人とは繋がっている。
しかし、友達の友達の友達まで行けども、彼に辿り着くことができなかった。
確かに同じクラスになって一ヶ月ほどだが、あの真っ黒マウスガードの男子生徒は、ほかの生徒と話しているのを見たことが無い。
「おい、何をしてるんだ永作」
「わっ! きたぁ!!?」
「ほぼお初にお目にかかる相手に結構なご挨拶やね」
いやぁ、あまりにも物事が上手く行き過ぎるとかましちゃうよね。
「女子たちが大騒ぎで探してたぞ。早く班に戻れよ」
ここで白状しておくと、わたしが迷子になったわけじゃないっていうのは嘘だよ。
もうお見事なくらい、吏依奈たちとはぐれて街をウロウロしていましたとも。
で、この相楽くんは自分から班を離れ一人行動していた。
わざわざわたしを探してくれていたのだ。
これも自慢じゃないが、わたしはけっこう人を見る目がある方だ。
このクラスメイトは、信用できる人だと、わたしの直観がビビビっと来ていた。
「あのね相楽くん」
「ん?」
だから頼った。
「この子なんだけど、話せるかな?」
「迷子か―――」
男の子は、背の高い
ていうか、本当に韓国語ペラペラだよこの人。ほぼネイティブスピーカーだよ。いや、よく分かんないけど。
「……ふむ」
あ、会話が終わった。
「なかなか複雑な話だ」
「なんて?」
「別れた親がプサンにいるらしい。家出してきたそうだ」
確かに少し複雑だった。でもわたしは真っ先に考えたことを口に出した。
「会わせてあげたいなぁ……誰か頼れないかなぁ」
永作瑠璃流ライフハック術。そこに、彼が反応した。
「そうやって、すぐ誰かを頼ってきたのか」
「へ? え、ええと―――」
わたしがあわあわしていると、相楽くん―――カズくんは目を少しだけ大きくして言った。
「ああ、悪い。別に責めてるわけじゃないんだ。どうもこの顔だといかんな」
言いながら、まるで何でもない風にマウスガードを取った。
隠されていた素顔が露わになる。
「あっ」
「しー、だよ?」
何かを言いかけた男児に、私は口に指を立てる。この仕草、韓国人にも通じるのだろうかと思ったが、どうやら言わんとしていることは伝わったらしく、男の子は口をつぐんでくれた。良い子だった。
「初手で他人を頼るなんて、俺には思いつきもしなかったよ。面白そうだから、少しやってみよう」
「何か手があるの?」
「こういう面倒ごとの処理が上手い知り合いが
「韓国では留学じゃなくてスパイ活動か何かしてた?」
カズくんの謎の人脈の正体は分からなかったが、また韓国語で何本か電話をかける。
「ヨボセヨ(←もしもしみたいな意味?)―――」
数分後。
「話はついた。じゃあ行くか」
「話がトントン拍子過ぎて逆に二の足を踏むよぉ!?」
「信じなされ信じなされ」
「ふふっ。それじゃ逆効果だよぉ」
初めて話したが、意外とおもしろい人だな。
「ただ、それなりに覚悟がいるぞ。こっからだと400㎞以上、どんなに急いでも四時間くらいはかかる」
「母を尋ねて400㎞くらい……」
「ひょっとしたら、夕方の帰国の便には間に合わんかもしれんぞ」
「行くよ、もちろん」
即答してしまった。
こんな偶然のチャンスはない。
ここでも、わたしは開き直っていた。
「そうか―――じゃあ、誰かに見つかる前に行こまい(←行こうかという意味、カズくんはけっこう訛る)」
カズくんは男児―――イム・ライくんと言った―――の手を取ると、まるで散歩にでも行くような調子で歩み出した。
わたしはライくんの左手を取った。
「家族には見えんだろうな」
「えー? そうかな」
「そうだよ」
そうしてわたしたちは三人で手を繋ぎ、プサンへ、そしてライくんの母親のもとへと旅立ったのだった。
※※
「ってことで、カズくんはわたしとライくんを助けてくれた恩人なのです……あれ? どうしたの
カズくんとのソウルからプサン、プサンから福岡、そして
「真実を知って今までの自分がやらかしてきた醜態が恥ずかしくなったんだろうな」
「……なるほどね」
「納得しないで!?」
さすがに天然なくるりちゃんでも、ここはフォローのしようがなかったのだった。
【続く】
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