弐 身体測定、体力測定
第8話 金町 コンゴ友愛祈念ボノボの森
二階堂先輩の研究室を訪ねる日がやって来た。約束通り、
「せっかくの有給なんだから、いっそ、お姉ちゃんは、らしいブレザー服を着ていったら」
というわたしのレコメンドをスルーした
それぞれの愛用チャリちゃんに跨り、金町駅北の.東都理科大学バイオメディカル研究キャンパスを目指す。
前を走る
「わたし達が卒論書いてた時は、建築中だったんだよね」
と言った
「だから、ボノボの森を見るの初めてなんだ」
と続けた。
流域面積世界2位のコンゴ川沿いに、何百万年もの間、平和な母系社会を築いてきたことで著名な霊長類はボノボたち。2040年代に入り、近隣の人々による残念な騒乱のおかげで、ボノボ社会は大きなダメージを被ってしまった。
どのような政治バランスが働いたかはつゆ知らず、わたし達が通っていたキャンパスの隣に、国連の基金などの交付を受け建設されることとなった、
だから、
ただ、わたし達の卒論の(事実上の)指導教官になってくださった二階堂先輩が、まさかのボノボの森勤務ということは知らなかった。当時、博士過程に在学しながら研究室助手をしていた二階堂先輩に、わたし達は随分とお世話になったのだけれど、社会人となってからのわたし達は研究室の皆さんとはすっかり疎遠となっていたのだ。たまに来る研究室OB、OGからのメッセージを概ねスルーしてしまっていたためとも言う。
霊長類ボノボの森勤務というと動物園の清掃員のような感じがしてしまうかもしれないが、二階堂先輩の今の肩書は、『国立大学法人京都大学大学院理学系研究科霊長類研究所 コンゴ友愛祈念ボノボの森 バイオマテリアル分野 特任准教授』というパリっとしたものだ。まぁ、二階堂先輩は、京大理学部を卒業なされた後に東大でマシンインテリジェンス分野で修士号を取ったという、わたし達とは異次元の秀才さまである。もちろん、有給助手待遇で東都理科大でバイオメディカル博士課程に進むと3年でさらっと博士号を取得なされている。出身校の特任准教授なんて、パリっとした肩書も当然なのでしょうね。
けれども、ボノボ達の姿は、わたしの記憶とは違っていた。
(やっぱ開園したばかりの頃は義手や義足は不十分だったのかぁ)
わたしが通っていた頃は、ボノボの森が開園してから5年ほど経っており、ボノボたちはそうとは気づかないほどによくできた義手・義足を身につけて、のんびりと過ごしていた。
眼前で、片手のボノボが片足のボノボと、ゆっくりと抱き合っている。
記憶の中のボノボ達よりもしょんぼりしている気がするボノボ達を目にして、(やっぱり、わたしは
と、わたしは、少ししんみりとなりつつ実感してしまう。
☆
ボノボの森を出たわたし達は、いったん東都理科大のキャンパスに入ってから、二階堂先輩の研究室がある霊長類研究所を目指す。
らしい制服姿のわたしは、母校のキャンパス内を
(まぁ、こんな小学校みたいな見た目の子が、中学生らしいセーラー服着て大学のキャンパスを歩いていたら、ちょっと気になるはずよね)
脳内記憶では一人前の大学OGであるわたしは、しょうがないわね、と達観しながら、ちょこちょことキャンパスを歩いた。
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