ボディーガード伝 《100PV達成!》
色塚京
第1話
連邦国家イルザウラ。
その国の都市ジファーナ。ジファーナではカジノや闘技場、酒場、高級ホテルなどがあり、活気に満ち溢れていた。その中でも国が運営している巨大カジノが最も人気である。
そんな巨大カジノで働く1人の若者の店員が絶望の淵にいた。
「おい、ユーリ!ここの金を盗んだのはお前か!?」
いきなり店長が大声で怒鳴る。
「何の話ですか?」
「とぼけるな!昨日の売り上げを入れてた金庫が空だったんだよ!」
「そんなことしていませんよ!なんで僕なんですか?」
「他の奴らが揃ってお前が犯人だと言っているぞ!」
遠くで先輩店員と数人が嘲笑うかのようにこちらを見ている。
どうやらはめられたらしい。その金庫が盗まれた状況を聞くと、アリバイがなく俺は詰んでいた。
「お前はクビだ!だが、俺の寛容な心で、世間には公表しないでやるよ。早く出てけ!」
公表してしまうと店に対しての信頼度が下がるからだろう。まぁ最初から長く続く職だとは思っていなかったしな。
「待ってください!ユーリさんがそんなことするはずがありません!」
突然1人の男店員が止めに入った。
女のような顔立ちをしたその子は同僚のネルであり、よく仕事や家族の相談に乗っていた。
「お前もクビになりたいのか!?」
「ええ、クビになっても構いませんよ」
「……っ!」
店長は男の娘で客にとても人気のあるネルを解雇したくはなかった。
だが、このまま店長と口論し続ければ、ネルであっても解雇されるかもしれない。
「お前は関係ないんだ。それにお前には妹さんがいるのだから今ここで辞めちゃだめだろう」
「でも……」
ネルはとても口惜しいそうな顔をする。
「とにかくお前はクビだ!分かったな!」
店長が荒々しく自分の部屋へ帰った。
「こんなのあんまりだよ!だってユーリは何も悪いことしてないんだから!」
「仕方ないさ。最初からここに長く居れるとも思ってなかったよ。お前みたいな奴と仲良くなれて本当によかった。またどこかで会おうな」
俺はスタッフルームを出てネルと別れた。
そしてギャンブルが行われているメインルームに行くと、毎日聞いているカジノ客の歓声が少しもの寂しく感じた。その歓声の中、大勢が囲って観戦している台が目に止まった。
「なんでこんなに群衆が集まっている?」
観衆の1人に尋ねた。
「若いお嬢さんが王族の方と大金を賭け合いしとるんや。見てたらこっちもハラハラしておもろいわ。兄ちゃんもこっちに来て見なはれ」
そう言うと、混んでいる中、俺が入れる場所を開けてくれた。
観客の中心では貴族の若いお嬢さんと王族の男がポーカーをしていた。
「これでどうだ!|フルハウスッ!」
「負け犬の遠吠えにしてはなかなか良かったわよ」
そう言ってお嬢さんが自分の手札を場に出す。
その瞬間、男は目を見開いた。
少女が出したのは《ロイヤルストレートフラッシュ》だった。
「バカな……この俺が負けるはずが……」
負けたショックで王族の男がその場で倒れ、泡を吹いた。
「つまんないの。行くわよ」
お嬢さんが立ち去ろうと椅子から立ち、そのままカジノから出るのだと思った。
だが、目が合い、去り際に俺の耳元で
「この後、私の館に来なさい」
そう言い残し、カジノから去った。
何だったんだ……あの少女は……
よく分からない誘いをされたが、そんなのに付き合ってる時間はない。
その後、すぐに街のハローワークに訪ねた。
「あの〜この経歴で雇ってくれそうな就職先ありますか?」
窓口の不機嫌そうなおばあさんに経歴書を見せ聞いてみた。
「ないね」
「えっ……」
「あんた黒服やってたんでしょ。そんな裏の繋がりとかありそうな店で働いてた奴雇うところないわよ」
「黒い繋がりなんて持ったことないですよ!」
「イメージなのよ!イメージ!」
それでも希望を捨てきれず、色々な所に書類審査に出してみるが全て不採用だった。
これは永久無職になってしまうのではなかろうか。
それは避けたいところだ。
悩んでいると、カジノで出会ったお嬢さんの話を思い出した。
行くあてもないことだし、行ってみるか。
お嬢さんに言われた通り館へ向かった。
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