小説投稿サイト攻略指南小説「美少女フィギュアのパンツを見るのが何より好きな俺は、理想のヒロインのパンツ見たさにラノベ作家になることにした。」
第3話「動機が不純で何が悪い。文明が発展したのは戦争とエロのおかげだ」③
第3話「動機が不純で何が悪い。文明が発展したのは戦争とエロのおかげだ」③
日中の講義中にいくら睡眠をとっているとはいえ、3日連続で見ず知らずの文芸部室でひとり夜を明かすのはさすがにつらかった。
警備員に見つかってしまうため、部屋の明かりはつけられなかった。
暦では季節はもう秋ももう半ばなのだが室内は外よりも蒸し暑く、窓を開けるわけにもいかなかった。
エアコンはなかったし、あったとしても音で気づかれる可能性があったから使えない。
扇風機はあった。弱風ならかろうじて使えたが、生暖かい風を俺の体に運んでくるだけだった。
水分補給も最低限にしなければいけなかった。頻繁にトイレに用を足しに行くわけにはいかないからだ。
今夜は特に暑く、俺は熱中症で死にそうだった。
床だけがひんやりと冷たかった。
俺は上半身だけ裸になり、床に寝転がることにした。朝、部室を出る前に床の汗を拭いていかなければいけないかと思うと面倒だったが、一度寝転がってしまったものは仕方がなかった。
今夜も西日野亜美が来なければ、俺は明日にでも彼女を学内で見かけたら、今日どこかで拾ったことにしてスマホを渡そうと思った。
そもそも俺が部室でこうして彼女を待ち構えていたのは、彼女とふたりきりになり、俺の夢を手伝ってもらうための取り引きができる状況を作り出すためだった。
そしてそれは、小学生の頃に読んでいた漫画のオマージュでしかなかったのだ。
声優を目指す女の子と結婚するために、漫画家を目指す男の子の漫画だ。
絵がうまい男の子が、話を考えるのがうまいクラスメイトの男の子とコンビを組む、そのきっかけとなる第1話のオマージュだった。
現実は漫画のようにうまくはいかないものだな、と俺は思った。
そもそも彼女が俺が考えている通りのお嬢様なら、一人暮らしではないだろう。実家暮らしで門限があったりするのだろう。
それに、どこに住んでいるのか知らないが、真夜中は公共交通機関が動いていない。自宅の車やタクシーなら真夜中でも使えるが、スマホを落とした当日ならまだしも3日目の真夜中にわざわざそこまでするだろうか。
結論。来るわけがなかった。
「馬鹿か……俺は……」
俺は体を起こすと、脱いでいたTシャツで床の汗を拭いた。多少目が暗さに慣れているとはいえ、全部は拭き取れないだろうが、多少は拭き残しがあっても朝には乾いているだろう。塩になっていなければいいが。
「あほらし……もう帰ろ……」
そう呟いて俺は、俺の方こそ家に帰れないことに気づいた。
俺はこの大学に電車やバスを乗り継ぎ、片道一時間半かけて通っていたのだ。
もう3日間家に帰ってはいなかった。
実家には大学のそばで一人暮らしをしている友人の家に泊まっていることになっていた。そんな友人はいないのだが。
運動部の部員のふりをして朝練の時間帯にサークル棟のシャワールームを使い、服や下着は大学の近くにあるファストファッションの店や100均で数日分買いだめしていた。下着は使い捨てだ。
だから今の今まで気づかなかったのだ。
本当に間の抜けた話だった。
それに俺はもうひとつ間が抜けていたことに気づいた。
つい先程、今夜も西日野亜美が来なければ、明日にでも彼女にスマホは今日どこかで拾ったことにして渡そうと思ったわけだが、
でもどうやってだ?
見覚えのある特徴的な絵柄の手帳型スマホケースだったから、俺は彼女のものだとすぐに気づいたわけだし、暗証番号まで0000から入力して調べたわけだが、彼女はおそらく俺の名前や顔さえ知らないだろう。同じ学部の同学年であることさえ認識していないだろうと気づいてしまった。
彼女から見れば、俺はこのスマホが彼女のものだと知っているわけがなかったのだ。
スマホをこの部室に置いていくわけにもいかない。今日の夕方にはこの部屋にはなかったものなのだ。部員たちが帰ったあとで誰かが部室に侵入していたことがわかれば騒ぎになってしまう。交番に届けるしかないだろう。
そして俺自身はネカフェにでも泊まるしかなかった。
俺は一体何をしているんだろうな、何がしたかったんだろうな、そんなことを思いながら部室を出た。巡回の時間帯はすでに把握していた。鍵をかけ、部室の前にある消火器の下に鍵を隠すと、堂々と正面からサークル棟を出た。
把握していた巡回の時間帯はサークル棟だけだったから、広い学内をソリッドギアメタルの主人公のように物陰に隠れながら進んでいき、無事大学の外に出ることに成功したのだった。
ひどく喉が渇いていた。
ネカフェや交番に行く前に、大学の正面にある交差点のコンビニで飲み物が買いたかった。
コンビニに入った瞬間、俺は目を疑った。
そこに西日野亜美がいたからだ。
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