小説投稿サイト攻略指南小説「美少女フィギュアのパンツを見るのが何より好きな俺は、理想のヒロインのパンツ見たさにラノベ作家になることにした。」

雨野 美哉(あめの みかな)

第1話「動機が不純で何が悪い。文明が発展したのは戦争とエロのおかげだ」①

 突然で申し訳ないが、俺の趣味は美少女フィギュアのパンツを見ることだ。


 そして、さらに申し訳ないことがある。


 俺は今、不法侵入という犯罪の絶賛真っ最中だということだ。

 どうか今夜も警備員に見つからないよう、あんたも一緒に祈っていてほしい。


 不法侵入といっても、俺が忍びこんでいるのは、とある大学のサークル棟の隅にひっそりと存在する文芸部の部室であり、一応俺はそのとある大学の学生である。

 問題があるとすれば、今が真夜中であることと、俺はそこの部員ではないということだろうだろうか。


 この大学は、文化祭前の一週間以外、真夜中に学生が部室にいることを禁じている。

 真夜中の部室は、飲酒や喫煙だけでなく、金のない学生にとってはラブホ代わりの場所になり得るからだろう。喫煙は火事にも繋がりかねない。

 大学は未成年の男女と成人済みの男女が入り混じっている。同じ学校でも高校までとは全く違った場所だ。講義に出なくても怒られることはないし、ほとんどの講義では出席すらとらない。

 だからといって、そんな風に学業をおろそかにしていれば簡単に留年してしまうこともまた、高校までとは大きく違う。

 地元の人間だけでなく、全国から学生が集まってきてもいる。高校でも野球やら何やらの強豪校なんかにはそういう学校があるにはあるらしいが。


 そんなわけだから、真夜中に部室にいれば、警備員に見つかった途端つまみ出されることはまず間違いなかった。

 だが、警備員には俺がこの部の部員であるかどうかまではわからないだろう。学生証を見せれば警察につき出されることもない。ひっそりと息をひそめてさえいればいい。


 文芸部の部員じゃないなら、一体どうやってこの部室に忍びこんだかって?

 簡単なことだ。どこの部でも部員なら誰でも部室の鍵を開けられるように、部室の近く、部員だけがわかるような場所に鍵を大体隠しているからだ。

 文芸部の部室の前には消火器があり、案の定その下に鍵を隠していた。


 俺はこの部の部員に用があった。

 3日前に、540円のスペシャルランチがべらぼうにうまいこの大学の食堂で、ここの部員のスマホを拾ったのだ。

 見覚えのある特徴的なデザインの手帳型スマホケースをつけていたから、同じ学部の学生のものだということはすぐにわかった。

 持ち主について知り合いに訊ねてみると、この部の部員であることがわかったから、こうして3日前から部室に張り込んでいるというわけだ。


 正直な話、持ち主はその夜のうちに部室に現れると思っていた。

 3日前、俺がスマホを拾ったのは食堂だったわけだが、持ち主が学内で最後に過ごしていたのはこの部室だったからだ。尾行していたから間違いなかった。うん、最低だな、俺。

 最低ついでに言っておくと、俺はその日の午後の講義のうちにはもう、スマホの暗証番号を0000から9999まで確かめていき、すでにロック解除の番号を把握していた。

 俺は自分の欲望に忠実な男なのだ。いや、欲望に忠実というより、知的好奇心が旺盛なのだ。そういうことにしておこう。だから、あんたもそういうことにしておいてくれ。


 だからこそ俺は、スマホの持ち主の秘密を知ることができたのだ。


 しかし、まさか真夜中になっても現れず、それから丸2日も失くしたスマホをほったらかしやがるとは予想外だった。

 普通ならスマホを失くしたりすれば、軽くパニックになるだろう。中学生や高校生の頃からスマホを持っていた俺たちの世代とはそういうものだ。

 すぐにでもケータイショップに駆け込み、失くしたスマホを使えなくしてもらい、新しい機種とSIMカードを用意してもらうだろう。

 だが、俺の目の前にあるスマホは丸2日以上たっても圏外になることはなく、使おうと思えばいくらでも使えてしまう状態にあった。

 ロックがかかっているから大丈夫だと思っているのだろうか。


 こいつはかの名作ホラー映画「彼女がスマホを落としたら」を観ていないのだろうか。文芸部の部員のくせに、原作小説を読んでいないのだろうか。


 俺はこのスマホの持ち主がただの学生ではないことを、持ち主がひた隠しにしている秘密を、ロックを解除したときに知ってしまったというのに。

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