第2話 十数年後
妻と別れてから、十数年が過ぎた。
私は、あまりにも理不尽な仕打ちによるショックから精神を病み、あの時の会社は辞めてしまっている。
あの場で離婚届に判を押す条件としてDVの被害届は出さないということで慰謝料こそほとんど無い条件ではあったが、共有財産である家も無くし、残った金も娘の養育費一括払いによって無くなってしまっていた。
現在では我ながら哀れな独り身の中年である。
対して妻と言えば、私と別れてから半年後には再婚したらしい。
相手はなんと、同僚だった高橋だ。おそらく、二人は離婚騒ぎの頃にはデキていたに違いない。ワクチン騒ぎは私と別れる口実だったのだ。
その年の正月。
ご丁寧に、私の実家に「結婚しました」的な幸せMAXな年賀状が送られてきたらしい。
それに激怒していた両親も、もうこの世にはいない。
……いや。
実は、妻も、娘も、高橋も……
彼女らを含め、この世の人類の70%はこの世にいないのだが。
あれから数年後。世界的に、再びパンデミックが襲ったのだ。
規模は先にも述べたとおり、最終的には人類の70%が死滅するまでの、史上最悪レベルの規模となるものであった。
世界は大混乱である。
何せ、たった数週間で人口の半分以上が倒れたのだから。
政治や治安が大混乱したのは想像に難しくないと思うが、もちろん医療体制だって崩壊してしまっていた。これでは、助かるものも助からなかったのは無理もない。
こうして、現在も続く暗黒時代が到来したというワケである。
今度のパンデミックはコロナ騒ぎの時以上に不可解な点が多かった。
ウイルス性の感染症ではあるのだが、当初は発症のパターンが全く掴めなかったのだ。
発症のパターンとは、例えばコロナの様に高齢者や疾患を持つ者は重篤化しやすいとか、若者は比較的問題ないとか、その様な傾向だ。
新型ウイルスはとにかく、高齢者であろうが、疾患持ちであろうが、若者であろうが、男・女であろうが関係なく、無症状の者、重篤化する者とはっきりと分かれたのだ。まるで、死神が気ままに指さしたものが倒れるかのように。
その理由は、当時から自然発生的な噂レベルで囁かれていたのだが……後にほぼ正解と特定された。
重症化した者は、コロナ禍の際にワクチン接種を行った者達であった。
文明は完全に崩壊はしていないとは言え現状の体制ではそのメカニズムを解明するに至ってはいないが、兎にも角にも、統計的にはほぼ間違いない事実であった。
結果論であることは認めるが、人類にとってコロナワクチン接種政策は、悪手だったということである。
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