第15話 大坪予備軍

 大坪が辞めたことで、奇行が目立たなかったもう1人の怪獣が目立ち始めてきた。


 【真崎】である。

 先日佐伯が頼まれていた仕事【とある商品のPOPを切る】をレジでしていた時のこと。


 同じようにレジに入っていた真崎はレジの中でぼーーーーーっとしていた。

 かと思えばカートを戻しに行ったり散歩に行ったりマトモにレジをしない(この時お客さんが多い時間帯でレジが2台体制)。 


 ようやく戻ってきたかと思えばぼーーーーーっとしている始末。


 佐伯は少しイライラしながらもPOPを切る作業を進める。

 このPOPは本部からの指示で、会社が力を入れてる商品の1つである為、早く売り場に付けないといけなく、その完了の期日も迫っていた。


 なのでレジしながらも急いでやっていたのだがそこに真崎が一言。


 「それ急ぎなの??」


 この女準社員のクセに優先順位が分かっていない。

 それどころか会社の指示メールの見方も知らない。

 結果こういう発言。ホントに準社かよ。


 すると、


 「お値引が先でしょ!!」


 と言って右手でバンッバンッと机を叩いた。


 さすがの佐伯もこれにはブチンッときたが、お客さんが周りにいる手前大声を出すことは出来ずグッと堪えた。


 それから少しして真崎はお腹の調子が悪くなったらしくトイレへ向かうのだが、お客さんがレジに並び始めた時でレジはてんやわんや。


 これが最後のトドメで佐伯はついに、


 「真崎さん!トイレ行くのは良いですけどせめてレジ応援呼んでから行ってくださいッ!」


 とインカムでブチ切れた。


 トイレ行くのは別に良い。生理現象だもの。お腹が痛くなる時だって誰でもある。

 だが行くなら相応の対応とってから行けよって話。仕事中なんだから。お客さん並んでるんだから。


 そのインカムを聞いていた店長は後ほど真崎さんと話をした。


 ただ、状況を完璧に把握出来ていた訳ではないので佐伯が怒っていたのは【いつも何度もレジを抜けてトイレに頻繁に行く】ことだと思っていたけども。

 まぁ確かに物凄く、人の10倍くらい多くトイレに行くけども。


 店長は「そんなに頻繁にお腹が痛くなるのなら1度病院に行ってくれ」と言う話をしたらしい。


 佐伯は、


 (そこじゃないんだけどなぁ)


 とは思ったものの、まぁそれも1つ思うところではあるので素直に感謝する事にした。


 それからというもの、その事がきっかけで佐伯は真崎と普通に話をする事はなくなった。

 佐伯は1度「こいつダメだ」と思ったらもう元には戻れない性格だったのだ。

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