第14話 終わりと始まり

 遅くなってしまったがついに大坪は仕事を辞めた。


 10月15日付けで退職、かくして怪獣の物語はおわりをつける―――はずだったが、この店にはまだ怪獣がいる。そして、いまだ知らないエピソードもあるだろう。

 そのネタがある限り続くと思われる。



 という訳で、以前のネタをお話したいと思う。



 ある親子がレジに来て例のごとく大坪が会計をしていた。

 子供がお金を渡したがり、親御さんは子供にお金を渡し会計を促した。

 大坪はそのお金を受け取りお釣りを渡す――が、そこは例のごとく上から落とすようにお金を渡す。


 当然お金は散らばり子供は拾い始めた。

 が、大坪は謝ることなく作業を進める。


 「謝らんかッ!!」


 当然親御さんは怒る。異変を察知した他のバイトがインカムを使い店長を呼ぶ。


 店長がその親子の対応をし、終わったあと大坪に話を聞くため倉庫へ。


 「どうしたの?」

 「お釣りを渡す時子供がお金を落としました」

 「親御さん怒ってたけど?」

 「わかりません。私はちゃんと渡しまし

た」

 「じゃあ一応カメラで確認してみる」

 「……落とすように渡してしまいました」

 「大坪さん、いつもそうやって渡してるの?」

 「いつもじゃないです」

 「じゃあカメラで確認してみるね」

 「…すいませんいつもやってしまいます」


 と、言ういつものやりとり。

 大坪はいつもお釣りを渡す時にそういう渡し方をしていると白状。

 理由は「腕を掴まれそうになるから怖い」とのこと。

 後にカメラで確認するが、お客さんが腕を掴もうとしているような仕草は過去になく、完全に大坪の被害妄想。

 さらに大坪がお客さんに「ありがとうございます」などお辞儀している仕草もなかった事がカメラで確認されたという。



 ようそんなんで接客業やろうと思ったな!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る