思うがままに生きるのはむずかしい
雪と凪
往事茫茫(おうじぼうぼう)の章
第1話五里霧中(ごりむちゅう)
皆さんはある朝起きて仕事に行くまでの間に違和感を感じたことはないだろうか。
いつも通ってる道、電車の中、なんかいつもより非常に人が少ない。もしかして今日は休日だったのではないだろうか、同じ景色なのになんとなく違和感を感じる。
そんな時、もしかして違う世界に転移したんじゃないかと。
この物語は40歳になってもそんな中二病的なことを思ってしまう独身のおっさんの物語。
「ふーむ さあてなあ、 一体どうしたもんやら」
俺、
あれは‥どう見ても俺だよなあ
床に転がっている死体?多分死体だろう外傷がほとんど見当たらないが、目は閉じているし呼吸をしている気配も無い身体。そして俺は、その体を部屋の片隅から見下ろしている。
これはあれだろうか、死後自分の体を見る幽体離脱というやつだろうか、
どうも記憶がはっきりしない。あいまいだ。自身に何があったか全く思い出せない。
目を瞑って思い返してみようとするが、何も思い浮かばない、
頭を抱え込んでいると、ふいに後ろから声が聞こえた。
「ほっほっほ、 さすがに思い出すのは無理じゃの」
振り返るとそこには 、言葉使いは老人だが見た目は小学生くらい男の子が立っていた。子供なんだろうか
「えーと、どちらさまでしたっけ?」俺は普通に聞いてしまった。
少年にとっては想定外の反応だったようだ。首をかしげている。
「この状況なのに。よくもまあそんなに冷静でいられるもんじゃ 、わしを気にしてる場合じゃないだろうに、大体。今自分がどうなっておるのか、おぬし理解しておるのかね」
呆れたような物言いでその子は言った。確かにその子を言う通りではあるのだが、
そうですねえ、たぶん死んじゃったんでしょうかねえと 俺
「お主、人生の中で最大級ともいえるインパクトなのに いささか感情が欠落しておるのではないか?」
そうは言われても、そもそも死んだという記憶がないので実感もないというところだ。
現にこうして話もしてるし、通常状態と違うのは自分の体を見下ろしていることぐらいだ。状況から察するに死んでいるのだろうとは思えるが。
「そんなもんかね」とあきれたように少年が言う
ふと、違和感を感じる。あれ、今俺言葉は口にだしてなかったはずだが、もしかして心を読まれてるのか?
「まあ死んでしまっては声を出すも、出さないもないがの、これでもわし一応神じゃからの人の心を読むなどといったことは造作もないわ」
なんと、この少年は神様なのか、
だとするといよいよ本当に死んだのか俺。そう言って再度体を見下ろす。
短い人生だったなあ、我が人生に一片の悔いなしとか言ってみたいもんだが、
正直、悔いが残のるような生き方はもとよりしていない。生き甲斐もなく、正確には残る悔いもないと言ったところか。
しかし、なんで死んだんだ、体を見ても外傷はなさそうだが。
「落ち着いているとはいえさすがに死亡理由は気になるかの、まあまずはわしの話を聞いてくれんかの」
そう言って優しい語り口調で話しかけてくる
自称神様がお話があるというのなら聞きますか
「自称は余計じゃ、わしはシュリーというれっきとした神じゃ」
ふむ、シュリーねえ、シュリーという名であれば・・・俺は記憶の引き出しをあちこち開けてみた。見た目は少年だし、言葉は老人だが、相手は神だ。容姿などは信用してはいけない。先入観をすてて、自分の知識を探るんだ。
思い当たる神様は、そう
「まったく余計な知識ばかり持っておるの」と少年は嬉しそうに言うと急に発光し始めた。周りが真っ白になり目がくらむ。
しばらくして光が収まると少年が立っていたところには女性が立っていた。
淡いブラウンのストレートのロングヘア、眉と目の間隔が狭くて切れ長の緑色の目が印象的だ。肌は白蓮華のように白く、優しい雰囲気を醸し出していた。
まさに女神としか形容できない
「そう私はシュリー、幸運と富の神と言われているわ」
ふわっと髪をかき上げると、こちらにウインクをして見せる。
さっきまで変な爺言葉を話す少年だったのに。
あ、あれか、古来から物の怪の類は正体を見抜くと
「誰が物の怪ですって?、神なんだからもっとちゃんと扱ってほしいわ」
むう、と膨れて見せる
ちょっと怒った顔も美しい。
しかし、いよいよ女神が出てきたということは死亡は確定事項か
今流行りの異世界にでも転生させてくれるのだろうか。
「残念ね、はずれ、そもそもあなたたちの妄想のような異世界というのは存在しないし、あるのは並行世界なのよね、だから、違う世界に移動しても移動先の世界にはその世界のあなたがいるから移動はできないのよ」
これは驚いた、神から多元宇宙論を聞くことになろうとは。しかし異世界と並行世界は具体的どう違うんだ
「それは、根本的原理が違う世界は存在しないってこと。近似値の世界は存在するってことね」
なるほど と言うことは小説の様に魔法とかある世界は無いんですな。異世界転生じゃないならなぜ女神たるあなたが?
まさか死者のお迎えにわざわざ神様クラスの方々くるとも思えないし
「あなたには現世に戻ってほしいの」
シュリーが目を伏せて話をする。
「今ね世界の状況は最悪なの、並行世界から妖異が次々とわたってきて増えているの、このまま増え続けるとこの世界が崩壊するの、だからねあなたはそれを滅してほしいの」
また急に情報量多いな。世界が滅亡?妖異?いったいなんなんだ。しかもそれを俺が滅ぼす?なんで俺?確か、つい今しがたその妖異っぽいものに殺されたのに
「あら記憶が戻ったの?」
言われて気がついた。自分から何の気なしに出た言葉。 そうだった俺はなんだかわからないものに殺されたんだった。
物事の様子や手掛かりがつかめず手段の全く立たない状況
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