第40話 新しいパンを作った朝霧ヨーコさん
窯から食パンの型を取り出す私。
ふふ……さすがにそろそろ手慣れてきたかしら。
ここまで一度も失敗なく出来ていますけど……どうやら今日もうまくいったようですわ。
パンを売りに行く日は、
こちらの世界の3時くらいから作業を始める私、白狐のヨーコ。
なんか、そんな生活がすでに普通になり始めていますわ。
あとは、今日
ネリメリアお婆さんに相談して果物の相談をしないとね。
天然酵母をつくるのに適した果物が手に入るかどうか。
これ、かなり重要ですわ。
とはいいましても
今は今日オトの街で販売するパンの制作に全力を尽くさないといけませんわね。
「ヨーコさ~ん、おはよ~」
あら?
もうテマリコッタちゃんが来る時間になっていたのね。
とりあえず、1回目に焼く準備が出来ていますし
窯の準備が出来たらみんなで早速やいちゃいましょうね。
私はそんなことを考えながら玄関へと急ぎます。
すぐそこまで駆けてきているであろう、テマリコッタちゃんをぎゅっと抱きしめるためにですわ。
◇◇
1回目のパンを焼いている間に、2回目のパン焼きの準備を始めます。
「ヨーコさん、今日は何をつくえるのかしら?」
テマリコッタちゃんは、満面の笑顔できいて来ます。
ふふ、何が出来るのか楽しみで仕方ないといった感じね。
「今日はね、普通の食パンを多めに作って、ここで調理してもっていくわ」
私がそう言うとmテマリコッタちゃんは、ぱぁっと顔を明るくしました。
「調理? パンを料理しちゃうの? ヨーコさん」
テマリコッタちゃん、まだ調理するためのパンが焼き上がっていないのに大興奮です。
「ねぇ、何を準備するの? 何を準備すれば良いの?」
台所の中で何度も周囲を見回していきます。
「テマリコッタちゃん、まずはパンが焼けてから、ね」
私がそう言ってニッコリ微笑むと、テマリコッタちゃんは改めてニッコリ微笑みました。
「わかったわ! じゃあパンを見てくるわ」
そう言うとテマリコッタちゃんは、慌てて庭へと駆けだして行きました。
うふふ
ホントに楽しみにしくれているのね。
実のところ、そんなに手の込んだことをしようってわけではないので少し不安がありますけれど、とにかく頑張ってやってみますわ。
◇◇
ほどなくして、一回目のパンが焼き上がりました。
全部で8個ある食パンの型のうち、まずは6個を熱々のまま魔法袋へ入れていきます。
そして、残った2つを台所へ。
「ヨーコさん、私が1つ持つわ」
待ちかねていたテマリコッタちゃん、その手に大きなミトンをはめて、満面の笑顔でまちかまえています。
「ふふ、それじゃあ気をつけて持って行ってね」
私がにっこり笑ってそう言うと、テマリコッタちゃんは、
「大丈夫よ、まかせて」
そう言いながら、大きなミトンで食パンの型を手にとっていくと、そのまま台所へ向かって移動していきました。
その後ろを、私も1つ、食パンの型を持って移動していきます。
2人して、焼き上がったばかりの食パンの型を台所の机の上に置くと、
私とテマリコッタちゃんは、今度は準備していた第二便の食パンの型を庭へ向かって運んでいきます。
食パンの型が4つ
あと、クロワッサンをのせた鉄板が1つ
「よしよし、そこに置いておいてくれ、あとはワシが引き受けるぞい」
クロガンスお爺さんは、窯の中のゴミを書き出しながら私達にそう声をかけてくださいました。
お言葉に甘えて、私とテマリコッタちゃんは机の上に食パンの型を置くと
「では、クロガンスお爺さん、よろしくお願いいたしますわね」
そう言いながら家の中へと戻って行きました。
すると
先に台所へと駆け戻っていたテマリコッタちゃんが、すでに机の脇でスタンバイ状態です。
「ヨーコさん、これをどう料理するの? 私は何を手伝ったらいいかしら?」
テマリコッタちゃんは、お手伝いしたくてたまらない用ですです。
ふふ
ではそうですねテマリコッタちゃんには……
私は、おもむろに魔法袋から卵をいくつか取り出しました。
キッチン下の調味料置き場から砂糖の袋も取り出します。
そうそう、はちみつも少し残っていたわね。
私はそれらをボールに入れていきました。
「じゃあテマリコッタちゃん、この中身を混ぜてくれるかしら?」
私が笑顔でお願いすると、テマリコッタちゃんは満面の笑顔でボールを手に取ると
「わかったわヨーコさん! まかせて!」
そう言うと、木べらを手に取りよいしょよいしょとボールの中身を混ぜ始めました。
さて
では私はその間に次の作業です。
食パンの型から食パンを取り出すと、
まずはそれを、パン切りカッターで適度な大きさに切り分けていきます。
そうですね、5枚切りの食パンの厚さくらいでしょうか。
それを切り分けたら、今度はその切り分けた食パン1枚を四等分にしていきます。
「わ~……」
あらあら、テマリコッタちゃんってば、
卵達をかき混ぜながら、パンを切り分けていく私の手元を見つめていますわ。
そんなテマリコッタちゃんの前で、私はフライパンを魔道調理器にかけ、バターの欠片をその上に乗せていきます。
さて、ある程度フライパンが暖まったところで、
「テマリコッタちゃん、ちょっとそれもらうわね」
私は、テマリコッタちゃんが一生懸命混ぜていたボールを受け取ると、その中に四等分したパンをどんどんいれていきます。
「うわぁ、何? 何をしているの、ヨーコさん!?」
テマリコッタちゃんは、その光景に大興奮しています。
そんなテマリコッタちゃんの目の前で、私は卵がしっかり浸った食パンを、今度はフライパンの上に並べて行きます。
ジュワ~
うん、良い匂い。
「ヨーコさん、何? なんなのこれ?」
テマリコッタちゃんも、興味津々でこれを見つめています。
そんな中、
「さ、出来たわ」
私は、焼き上がった食パン~そう、フレンチトーストを1つ、テマリコッタちゃんの前に置いたお皿の上におきました。
「さ、召し上がれ」
私がそう言うと、テマリコッタは、その目をフレンチトーストに向けたまま、その手をワタワタさせながらフォークを探しています。
ふふ
私は、空しく空を切っていたテマリコッタちゃんの手にそっとフォークを手渡しました。
するとテマリコッタちゃんは、いただきますを言うのももどかしい様子で、フレンチトーストを口に運んでいきました。
もむ……もむもむ……
「甘い! すごく甘くて美味しいわ!」
テマリコッタちゃんは、満面の笑顔でそう言ってくれました。
そう言うが早いか、テマリコッタちゃんは、すぐに残りのフレンチトーストを口の中に運んでいきます。
ふふ、よかったわ。
テマリコッタちゃんの太鼓判付きなら安心ね。
私は、そんなテマリコッタを笑顔で見つめながら
残りのパンをどんどん焼いていきました。
テマリコッタちゃんも、自分のフレンチトーストを食べ終えると
パンを卵に浸すお手伝いをしてくれ始めました。
「ヨーコさん、ここはまかせて!」
そう言うと、先ほどまで私がやっていたように、食パンをボールの中に入れていきます。
そして、私はそんなテマリコッタちゃんから渡された食パンをどんどんフレンチトーストに仕上げていきます。
ほどなくして、台所の中は甘い匂いが充満していきました。
「おいおい、何やら家の中から良い匂いがしてくるな」
家の外で、クロガンスお爺さんの声まで聞こえて来ました。
ふふ
私は、焼き上がったフレンチトーストを数枚お皿に取り分けると、
「テマリコッタちゃん、これをクロガンスお爺さんに差し上げてきてくださるかしら?」
そう言いながら手渡しました。
すると、テマリコッタちゃんは満面の笑顔を浮かべながら
「わかったわヨーコさん。まかせて」
そう言いながら、パタパタと家の外へと出て行きました。
ふふ、
クロガンスお爺さんも気に入ってくださるかしらね
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