第2話 突然のハプニングは戦艦の甲板上で

 戦艦長門は、八八艦隊計画の一番艦として計画された。史上初めて41センチ砲を搭載する戦艦として建造され、竣工時は世界最大であり、世界最速を誇っていた。終戦時、航行可能な唯一の戦艦であったが、ビキニ環礁での水爆実験の標的艦とされ沈没した。


 ビキニ環礁に沈んでいたこの戦艦長門をとある宇宙人が引き上げ、そして復元した。更に、その宇宙人がオーバーテクノロジーを用いて次元航行が可能な、完全無人のAI搭載型戦艦に改造したのだ。そして長門は地球防衛軍本部を攻撃すべく萩市沖に進出して来たのだが、地球防衛軍側が搭載AIを懐柔し事なきを得た。そして長門は、萩市立地球防衛軍の所属艦となり現在に至る。


 この長門、平時は異次元空間に投錨している。何故ならば、萩市に戦艦長門が停泊できる港が無い事と、こんな大型艦が沖合をうろちょろしていては漁業に差し障りがある事がその理由だ。萩市は漁業に力を入れている地方都市なのである。


 そんな長門が突然三次元空間に現出したわけだ。


 ララはコーラをちびちび飲みながらミサキに問う。


「何があったのでしょうか?」

「さあ。長門さんに直接聞いてみないとわかりませんね」

「では早速、乗り込んでみましょう」


 手に持っていたコーラのペットボトル(350㎖)をテーブルに置き、ララが立ち上がった。そして、浜辺で椿と遊んでいた正蔵の首根っこをひっ捕まえ、長門へ向かって放り投げた。


「あぎゃあああああ!」


 正蔵の叫び声が周囲に響き渡るが、誰も彼を心配していない。


 ララは少し助走した後、長門へ向かってジャンプした。空中で正蔵をひっ捕まえ、長門の甲板に着地する。それは見事な、数千メートルの跳躍だった。


「はあはあ。ララ隊長。何て事をするんですか? 死ぬかと思った」

「心配するな。椿さまも付いて来たしな」


 正蔵の脇には、水色の浮き輪に体を突っ込んでいる三歳児の椿がいた。


「正蔵さま。夏空の空中散歩は気持ちがいいですね」


 椿はそう言ってニコニコ笑っている。正蔵はというと、顔面蒼白で腰が抜けていた。


 長門は完全自動化されているのだが、その艦体の防護のため、武装した戦闘用アンドロイドが十数体ほど乗り込んでいる。しかし、その姿は見えない。周囲にいたのは、水着姿の若い娘たちであった。しかも、100名程度いた。


「きゃー。殿方ですわ!」

「男! 男よ!」

「もっこり具合はどうかしら?」

「気になりますう~」

「うわあ! これは渋い感じのイケメン様」

「一番は私よ」

「ああん。抜け駆けは無しよ」

「ここは早い者勝ちだ!」

「あなたどきなさいな」

「あーん。縮こまってる」

「大丈夫よ。すぐにもっこりさせますから」

「それなら私に任せて」

「私よ。私がやるわ」

「ああん。素敵。元気になってきましたわ」

「若い男の匂い。たまりません!」

「もう我慢できない。キスしちゃえ!」

「私も!」


 突如、甲板上で繰り広げられる痴態に、呆然と立ち尽くすララと椿であった。そして正蔵は呆けた顔で、100人の美女にされるがままとなっていた。

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