第18話 地獄発生器

アスモダイを多数の砲弾が襲う。

赤毛の魔人が炎に包まれる。


そこに近付いてくるのは多脚砲台。

古代兵器『アップルシード』


森が燃え上がる。

砲台から打ち出された大砲の弾は当たりを焼き払うのだ。


野生動物たちは我先にと逃げて行く。

鳥たちは既に姿も見えない。

森林が炎に包まれ、草花は跡も残らない。


副将アブーが震えながら言う。


「これは聞いた事が有ります。

 周囲を一千度の熱で燃やし尽くす最悪の地獄発生機械。

 ナパーム弾、その地獄をそう呼ばれると」




王とその側近は引き気味。

斥候用ペガサスに乗り、遠方から観察していたのだ。


「王よ、いくらなんでもやり過ぎな気がするのですが」

「森が、建物が全て焼き尽くされてますぞ」


「いくら相手が魔族と言っても」

「ここまで残虐な仕打ちをしてしまっては」


「後に停戦もなりません」

「魔族の恨みをずっと抱える事になりますぞ」


「分かっておる、分かっておる。

 分かっておるーーーーー!!」


「なら王、あの『アップル・シード』を止めましょう」


「……」


「……どうやって?」


「あのまさかと思いますが、」

「停止スイッチかなにかお持ちなのでは?」


「…………無い(てへぺろ)」


この世で最も可愛くないてへぺろであった。




オキュペテー、アエロー、ケライーノ。

ハルピュイアの三姉妹が嘆く。


「ああ、あたしたちの家が……」

「森が焼き尽くされる」



機械仕掛けの蜘蛛の様な砲台。

『アップルシード』から周囲に放たれる。

灼熱地獄が。


全てが燃え上っているのだ。

煮えたぎる世界が産まれていく。

動物も植物も燃え尽きる。


地獄発生器。

古代兵器『アップルシード』が移動していく。

そのカメラが捕らえる。

前方に動く存在を。


【生物発見】

【ヒューマンタイプ】


電子頭脳が診断。

彼等にとって脅威となりうる存在では無い。

彼等の電子頭脳が通信する。

それぞれの電子頭脳がお互いを補う。

多数にして一つの意思。

それが古代兵器『アップルシード』であった。


【体長:1メートル50センチ、誤差プラスマイナス3センチ】

【重量:……】


【……】

【対象ロスト】

【……】

【ヒューマンタイプから予測される移動速度を大幅に上回ります】


それは既に彼らの足元にいた。

鋼鉄の脚を蹴り上げる。


「今、何しようとしてたー?!

 乙女の秘密を何かさらそーとしてたでしょ」


【No14の脚に衝撃】

【先程ロストした対象と推定】

【脚に加えられた打撃衝撃力はヒューマンの力を遥かに上回ります】

【対象は何者?】

【不明】

【外見はヒューマン】

【しかしその能力からヒューマンに似た特殊亜人】

【現在は魔族と呼ばれる特殊能力の持ち主と推定】

【不明】

【体格と重量から推測される筋力からは有り得ない】

【不明】

【不明】


「じゃなくて、

 ハルピュイアのお姉さんが住んでる森になんてコトすんのよ。

 アンタらキモイからぶっ壊す!」


そこに立っていたのはもちろんるるる子ちゃんであった。

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