第12話 破壊王


「なにっ、魔王城が崩れただと」


「はっ、ペガサス斥候隊から報告が有りました」

「城の真ん中から破壊され、跡形も無いと」


「一体何が有ったのだ」


人間の王は首を捻る。

もっとも贅肉で首は見えないのだが。

頭をかしげる。

人間族が攻めたのでは無いのである。

ペガサス斥候隊は空を飛んで戦場を確認できる。

しかし戦闘能力は大したことが無い。

グリフォンなどに見つけられたらイチコロ。

城を落とすなんてそんな力は無い。


「魔族も一枚岩では無いのでしょう」

「キスキル・リラはその叡智と美貌で魔族を統括しています」


「しかしキスキル・リラを上回る攻撃能力、凶暴さを持つ魔族は多数います」

「そんな狂暴な魔族の仕業では」


「何じゃ、あの年増魔王。

 部下に裏切られたのか。

 いい気味だ。

 ワシをニセの肖像画で欺こうとするからだな」


いや、それはアンタだろ。

報告の兵士達は思うが。

王にその言葉は言え無いのである。

周囲にいた貴族たちも口を挟む。


「しかし、警戒が必要です」

「キスキル・リラは魔族としては温和な性格。

 彼女がいてこそ、不戦協定の話も進みました」


「もしも狂暴な魔物が魔族を率いたなら」

「攻め入ってくる可能性も高いかと」


「しかも人間の護りの要であった」

「四聖獣の砦はもうありません」


「王が召喚した勇者は役に立つどころか」

「魔族に寝返りましたぞ」


「王よ、この責任は一体」

「どうされるおつもりです」


「うるさい、うるさーい。

 ワシにちゃんと考えが有るわー。

 ちょうどよかろう。

 アレを使うのだ。

 魔族が内輪揉めしてると言うなら良いタイミングではないか」

 アレを使って攻め入るのだ」



魔王城があった場所は今、更地になってる。

一度壊れた建造物の欠片をどかさないと再建築も出来ない。


「あははっ。

 ゴメン、ゴメンね」


笑ってゴマカしながら崩れた壁を運ぶのに協力するるるる子ちゃん。


そんな彼女も今は脇に追いやられてる。

新しい城の土台建築工事。


「この辺は微妙なワザが必要なんだ」

「ちゃんと計算しないとダメなんだよ」


鬼族・オーガや蛇妖精・グレムリン。

器用な工事人たちが集結。


シロウトはどいてな。

というコトらしい。


るるる子ちゃん達は仮宿泊所でお茶を飲む。


「ちぇー、せっかく手伝おうと思ったのにな」

「勇者様、専門の人達に任せた方が良いですよ」


巫女のお姉さんと魔王キスキル・リラも一緒。


「にしても勇者の破壊力はハンパないな。

 破壊王じゃな」


破壊王。

プロレスラーみたく言わないで欲しーな。

せめて破壊女王でしょ。

むくれるるるる子ちゃん。


「しかし、こんな話が魔族に広まるとな。

 そんなツエー奴がいるのか。

 とか言って見に来るアホウが出そうじゃのう」


へー。

俺より強い奴に会いに行く。

カッコイイじゃない。


そんな余裕をかましてていいのか。

既に迫ってきているのだ。

何が。


ドガーーーーン!!

仮宿泊所が壊される。


「テメェがるるる子とか言うヤツか。

 俺の名はアスモダイ。

 強ええヤツをぶっ倒しに来たぜ」


そこには巨大な魔人が立っていた。

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