第9話 青竜将軍
魔族と人間族との境。
大きな川が流れている。
大河ルビコン。
お互いこの先に入らない。
その境界線と呼ばれる。
人間達はその川沿いに砦を設けている。
全部で四ヵ所。
四聖獣の砦と呼ばれる人間族の護りの要であった。
「何っ、魔族が攻めて来るだと」
「はっ、青竜将軍様」
「休戦協定はどうしたのだ?」
「それが、どうも王と魔族の王の間でイザコザが有ったらしく。
協定は結局結ばれなかった様なのです」
「何だと、バカな」
青竜将軍は驚きの声を上げる。
当然である。
休戦協定が結ばれると通達が有った後、何も聞いていないのだ。
協定がコケたのなら、最前線に真っ先に知らせるべきであろう。
「ええい、王都のバカ貴族どもめ」
王都は前線の苦労など全く分かってない。
苛立つ将軍だが、グチっても何にもならない。
「至急、兵どもをかき集めろ」
「はっ・・
はぁーあああああああああああああああああああ!」
「わわわわっわわわわわっわあわっわわわっわわあ」
兵士達は応答の声を上げられなかった。
何故なら、砦の壁がいきなり爆発したからだ。
「むっ、何者だ?!」
青竜将軍が破壊された壁の方向を睨む。
そこに立っていた人影は。
白いシャツにチェックのスカート。
中学の制服姿に身を包む少女。
るるる子ちゃんであった。
「何だ、子供じゃないか」
「魔族の手先か」
「女の子だぞ!」
「魔族だからな、姿だけ化けているのかもしれんぞ」
といいつつも兵士達は緊迫感が足りない。
相手は自分達より背の低い女の子なのだ。
武器すら持っていない。
「貴様ら、どいていろ。
この女、貴様ら一般兵が敵う相手では無い」
「青竜将軍様、バカにしないでくださいよ」
「相手はチビですぜ」
「誰の胸が小っちゃいって!」
ざんえいけん!
一瞬で兵士が二人倒れていた。
るるる子ちゃんの肘打ちを喰らったのである。
「あわわわ」
他の兵士達は逃げ惑う。
少女の動きすら見えなかった。
なのに仲間が一瞬で倒されている。
「フッ、やるな。
しかしこの青竜将軍には敵わない」
青竜将軍が槍を持ち、少女の前に立ち塞がる。
「おおっ、青竜将軍様」
「あれをやる気だ」
「魔族百人を一人で倒す大技」
「ルビコンの大河さえ逆流させるという神技」
『大河百龍覇』
将軍の槍から無数のエネルギーが打ち出されていた。
竜の様にも見えるエネルギー派。
本来一発でも半端な魔族など倒すだけの力を秘めている。
それが無数に繰り出されるのだ。
その先にいる小柄な少女など一瞬で消し飛ぶだろう。
兵士達はそう思った。
だが。
げんえいしらぬい・ひえい!
既に百龍覇の打ち込まれる先にいた人影は無い。
青竜将軍の背後に現れた少女は一蹴りで将軍を吹っ飛ばすのであった。
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