第4話 魔獣グリフォン


ムカムカ!

廻り中の貴族たちはビクビクとるるる子ちゃんから隠れる。


なによ。

チューガクセーの女の子に対して。

バケモノみたいな目で見て。


その隣で王様は倒れてる。

プスプスと焦げてる。

煙を全身から上げてる。

大やけど。

良く死なずに済んでるな。


るるる子ちゃんに。

やり過ぎちゃったかなー。

なんて後悔はない。


怒ってるのだ。

オコッテんじゃない。

イカッテんのだ。


その怒りの目に飛び込んで来たマモノ。

翼が生えてる巨鳥がいる。


ライオンぽい胴体。

鷲の様な大きな羽根。


「へー、ライオンと鳥のあいの子。

 アナタ、空飛べるの?」


るるる子ちゃんは目に映った変なのに近付く。

警戒心なんてモノは無い。

オモシロ可愛い動物に夢中なのだ。


「おおっ、グリフォンに挑むとは」

「さすが、勇者様」


グリフォンと言えば、恐るべき魔獣。

その爪で水牛をも一撃で倒す破壊力。

体長は3メートルを超し、空を自在に飛ぶ。

王国の騎士では数人がかりでも歯が立たない。


驚くのは王国の貴族だけでは無い。

魔族も同様。


狂暴なる魔獣、グリフォン。

魔王ですら、その扱いには手を焼くのだ。

怒らせでもしたらシャレにならない。


グリフォンは喉の奥で唸りを上げる。

その視界に映るのは、小柄な少女。

しかし。

その全身から溢れ出るオーラ。



貴族たちは囁く。


「どうする?」

「もしも勇者様がやられでもしたら」


「人間達はお終いかもしれんぞ」

「あの小柄な少女ではいくら勇者の不思議な技を使うと言っても」


「相手はあのグリフォンだ」

「一撃で殺されてしまう」


巨大な魔獣と小柄な少女の距離は近付きつつあった。

誰かが唾を呑み込む音が聞こえる。

緊張感はピークに達しようとしている。


グリフォンはコテンと寝転がる。

腹を見せて転がる。


咽喉からゴロゴロと高い音が聞こえる。


「ご主人様、撫でて―」


そんな響き。


「カワイー」


るるる子ちゃんはご機嫌。

ライオンの様なお腹を撫でだしてしまった。


プスプスと煙を上げてた王様。

王様はいつの間にかシブトく復活。

立ち上がって叫ぶ。


「おうっ、怪しい技でグリフォンを倒すとは。

 ガキンチョの様で勇者だな。

 良しっ。

 者ども、グリフォンを討ち取れ!

 勇者の技が効いている内にトドメを刺すのだ」

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