天才と剣聖のお話

洞爺湖

その摩天楼は夢を見るか

剣聖は退屈していた。


剣聖は、彼女は、強かった。


剣聖と呼ばれるほどに強かった。


数多の人をねじ伏せ、竜の群れを薙ぎ払い、権力すらも手に入れた。


そして彼女は強すぎた。


剣聖と呼ばれてしまうほどに。


戦う相手がいなくなるほどに。対等な相手がいなくなるほどに。


それは無人の荒野を歩いているのかと錯覚するほどの虚無感だった。


虚無感を別のもので埋めることもできなかった。


それをするには彼女は剣を振っている時間が長すぎた。それしか無くなってしまう程に。


皆が遊んでいる時に剣を振っていた。皆が学んでいると時に剣を振っていた。皆が色恋に夢中になっている時に剣を振っていた。


彼女とて一人の人間だ。それらに興味はあった、やってみたくもあった。


だが、もう叶わぬだろう。


どうせ私は死ぬまで一人なのだ。このまま退屈に剣を振るだけなのだ。


そう自暴自棄になりながら、それでも剣を振っている。


どこかにこの退屈を解消してくれる人物はいないものか。


そんな淡い希望を抱きながら。


そんな彼女を人々はこう呼ぶ。


摩天楼の剣聖と。


人々は言うまでもなく分かっていた。彼女が頂きにいることを。


だが、その頂きが圧倒的すぎてどの高さにいるのか分からない。頂きにいるはずなのに、頂きがどこなのか分からない。


この世界には比較対象が無さ過ぎた。


だから摩天楼と、そう呼んでいた。







少年は退屈していた。


彼には夢がなかった。熱中できるものがなかった。


なぜなら大抵の事は出来てしまうし、大抵でない事なら少しの努力で出来てしまうからだ。


十で神童。十五で才子。二十歳過ぎればただの人。そんな格言もあるが、少年は十五を超えても神童のままだった。


そんな彼を見かねた両親は、ある日彼を国の首都へ連れ出した。


何か彼に刺激を与えてやりたかったからだ。


少年は乗り気ではなかったが、そんな両親の意図を汲み取り、黙ってついてきた。


見たことの無い食べ物。本でしか見たことのない光景。想像を絶するような人の数。


しかしそれでも心は踊らない。


食べ物よりもそれを売っている店舗のずさんさに目がいく。


見たことの無いはずなのに、構造すら知っている、ある種見慣れた建物。


人混みで隠れてはいるが、それでもありありと分かるほど汚い道。


少年の心は冷え切っていた。。


目的もなく両親の後をついていくのみ。そんな冷え切った彼の目に、一際大きな建物が映る。


それもやはり本で見た本で見た建物。特徴からして闘技場だろう。若者風に言うならコロシアム。


そんな建物の中で歓声が沸き起こっている。そしてコロシアムの壁に大きく描かれた「剣聖特別演武」の文字。


少しだけその文字が気になった。


あらためて辺りを見回してみればその文字は至る所に点在している。


より興味が濃くなっていく。


そしてそれがたった一人の少女によって巻き起こされていると気づいた時、少年の心にはわずかな火が灯った。


迷いは無かった。


なぜなら、あれが演武で、披露するものだというなら、すぐに終わってしまうはずだから。


両親にコロシアムに行く旨を伝えると苦虫を噛み潰したような顔をされたが、剣聖の文字を指さすと反対はされなかった。


コロシアムに向かって歩いている間にも歓声は起こり続けている。


はやく行かなければ終わってしまう。そう思うと自然と足が早くなる。


人混みの中をかき分け、いくらかの入場料を払い、やっとの思いで剣聖の姿を見ることができた。


少年の中で時が止まった。


美しかった。


流れるように振るわれる剣技が美しかったのではない。


それをただ振るう彼女自身が美しかった。


この国の姫よりも、傾国の美女よりも、美形の王と称されるエルフの王女よりも。


例えることなど出来ないし、そんな彼女を評価する指標さえ見つからない。


それはまるで摩天楼のようだった。


そして時が止まったと思っていたのに、気が付けば演武は終わっていた。


それでもコロシアムには彼女の残滓が漂っている。


ここを去ってしまうにはあまりにも名残惜しかったが、両親のことを思い出し少年は泣く泣く帰路についた。


家に帰っても、ベッドで横になっていても、夢の中ですらも少年は彼女のことを考えていた。


数日経てばこの思いは薄れていくのではないかとも思っていたが、逆に日が経つごとに募っていく。


そんな思いを抱えた少年はある日、母親にある質問した。


「剣聖と会うにはどうすればいい」


それは至って単純に、少年の心の内を表した言葉だった。


だが、それは彼の母親には伝わらない。


母親は彼の言葉を冗談だととらえた。


そして普段冗談を言わない彼の発言に困った末、こう返した。


「剣聖と同じぐらいに剣が上手くなればいい。そうすれば、物好きな誰かが剣聖と会う場を整えてくれる」


そう答えた。


母親は冗談に冗談え返しただけ。


だが、その日少年のやるべきことが。


やらなければならぬことが決まった。



それから少年は剣を振った。


やはり才が有ったようですぐに人よりかは出来るようになった。


だが、あの日見た彼女の動きとは到底比べることなど出来ない。


そもそも彼の体格は凡人だった。


優れた体格もない。剣を力強くも振るえない。人並外れた握力もない。


とにかく人が才を感じる要素を備えていなかった。


それでも少年は剣を振るった。



少年にとって剣は退屈だった。彼女に近づく為に振っている。


そこにはなんの信念もない。


ただただ無心で振った。


雨の日も剣を振った。


風の日も剣を振った。


雪の日も剣を振った。


そんな彼を見ても両親は何も言わず、放っておいた。


少年が何かに熱中するのは初めての出来事だったからだ。


それに両親は、ある信頼を少年に寄せていた。


息子ならば放っておいても大丈夫だろう。


そもそも我々の手には余るほどの才を持って生まれた子だ。将来なにかに困ることもないだろう。


そんな信頼だ。


それが親馬鹿ゆえなのか、客観的事実なのかは誰にも分からない。


さすがに雷の日に剣を振って、落雷をその身に受けた時は本気で叱ったが、それでも剣を取り上げることは無かった。


大地に命が芽吹き、成長し、実り、枯れていく。


それを二度ほど繰り返したころ少年は青年と呼べる年齢になった。


それでも少年は変わらず剣を振った。変わらぬ思いを抱いたまま。



また季節が巡りかけた頃、村にとある剣客が訪れた。


剣客の仕事は山に巣くった動物の討伐。


そう言えば簡単そうだが、誰にでも出来るという訳ではない。


剣客は昔、一世を風靡した冒険者だった。


そしてそんな過去の栄光に思いを馳せながら、上の小間使いに勤しむ冒険者だった。


あの頃は楽しかった。


剣に夢を見ていた。


自分の剣に自身を持っていた。


だが、彼女に会ってからそんなものは崩れ去ってしまった。


娘程の年齢の少女が、あまりにも、あまりにも洗練された剣を振る光景。


それは圧倒的で、絶望的だった。


とはいえ、それでも剣を捨てることは出来ず、上から振られた無茶ぶりをこなす退屈な生活を送っていた。


そんな剣客の退屈さは、森に向かう途中に見かけたある青年によって空のかなたに消し飛ばされた。


青年をよくよく見れば、あの剣聖と同じ動きをしているではないか。


いや、正確に言えば数年前の剣聖と同じ動きをしている。


今を生きる彼女の動きは、あの青年の動きよりも。


おそらくは彼の中での剣聖が数年前の時点で止まっているのだろう。


そう気づいたとき、剣客の心はかつてない程に踊っていた。


もしこの少年を今の剣聖と引き合わせたらどうなるのだろうか。


もし彼の中での彼女が上書きされたなら、彼女と互角に戦えるのではないか。


ついにあの摩天楼に高さが、凡才の私にも理解できるのではないか。


森をかき分けながらも様々な思いが心を巡っていく。


森である生物を駆逐し終わった時、剣客の腹は決まっていた。



青年は困惑していた。やけに身なりが良いのに、やけに物騒な人物に声をかけられたからだ。


それも第一声が「私と一緒に来ないか。剣聖に会わせてやろう」。


そんな言葉だったのでより困惑した。


まだ記憶の中の彼女と自身の動きはかけ離れている。


彼女はもっと優雅だった。無駄がなかった。美しかった。


今の状態で会うのは彼女に失礼だろう。


そう思い、否定しようとしたのに口は別の言葉を紡いでいく。


剣を振ることで紛らわせていた思いが心の奥底で燃え上がる。


気づけば剣客の後ろを歩いていた。


再び気が付けば剣聖と会っていた。



再会。いや、初めて対面した彼女は、記憶よりも美しかった。


コロシアムで見かけた時ほど服装はしっかりしていなかったが、みすぼらしいというほどではない。


幾分かカジュアルな恰好で、何かこみ上げてくるものがあった。


彼女と何か話したかったが、連れてこられたのはそのためではないらしい。


剣聖は手慣れた様子で立てかけてある木刀を青年に投げ渡す。


木刀など眼中に無かった青年は、ぶつかるか否かのすれすれで慌てて木刀をつかんだ。


そこでやっと青年は辺りを見回す。


殺風景な四方二十メートル程の部屋。


壁に寄りかかりながら厳つい人物がこちらを眺めていて、その横に木刀が何本かと、刃のつぶされた剣が立てかけられている。


床は石畳だが、なにやら加工がされているようで滑るような感触はない。


辺りを見回す青年と対照的に、剣聖は退屈そうに剣を構えた。


そんな彼女につられて青年も剣を構える。









青年は動けなかった。


それは彼女の威圧感がどうとかそんな話ではない。


人と手合わせをしたのが初めてだったからだ。


しばらく互いを見つめあったのち、しかたなしに剣聖は動き始める。


本来は青年の方から仕掛けるべきだった。


そうでなければ勝負は一瞬にも満たない時間で終わってしまう。


だが、そんなことは青年には分からない。


空気が変わる。


剣聖は恐ろしく洗練された動きで初太刀を繰り出す。


それはまさしく不可避の一撃。ほとんどの人間がここで負けを認めてきた。


だが、青年には何となく彼女の動きが分かっていた。


今まで彼女の動きを幾星霜と重ねてきたから。


青年は、剣聖の初太刀を弾く。


続く二の太刀を流す。


三の太刀をなんとかこらえる。


分かってはいても、それらを防ぐのは容易ではない。


そんなことはお構いなしに、四の太刀、五の太刀と剣は紡がれていく。


青年の目には彼女が剣と踊っているように見えた。


剣が踊っているのではない。「彼女が剣と」だ。


本来なら、その踊りの担い手は青年だったのだろう。


だが、青年にはそれほどの力量が無かった。


それゆえしかたなしに彼女は剣と踊っているのだ。


自身の非力さに嫌気がさす。


だが、まだ食らいつける。まだいけるはずだ。


青年は自身を無理やり鼓舞する。


そして彼女の踊りは続いていく。


そんな彼と彼女を見て、剣客は諦めの境地にいた。


あの青年と戦わせたのならば、剣聖の力量が分かると思っていた。


それはつまるところ青年を当て馬にして、あの化け物と自身との距離感を測れるのだと。


あの化け物目指してさらなる高みに登れるのだと。


そう思っていた。


だが、自分の目には怪物と物怪が戯れているようにしか見えない。


土台無理だったのだ。


凡才の自分がやつらを理解することなど。


この闘いを見て終わりにしよう。


剣に関わるのはこれっきりにしよう。


そんな諦めと絶望の中にいた。


世は無情だ。


そんな剣客の思いを鑑みることもなく、その時は訪れた。


借りた金で別の借金を返すような応酬。


そんなものがいつまでも続くはずがない。


ここから先を続けるには圧倒的に力が足りない。


そう青年が予見した時、彼女の剣が美しい弧を描きながら青年の腹をとらえた。


かと思えば触れる寸前で木刀が止まる。


勝敗は語るまでもなかった。


青年は絶え絶えの息を必死に整えようとした。


ある言葉を伝えたかった


そしてその時は今しか無かった。


この機会を逃してしまえばもう一生言えなくなってしまうだろう。


そもそもの話、もう二度と会えなくなってしまうだろう。


「僕と結」


「また来るといい」


青年の言葉は剣聖によってさえぎられてしまった。が、それでも青年は嬉しかった。


また彼女に会えるから。


次が約束されたから。


それから青年は剣聖のもとへ通った。


雨の日も、風の日も、雪の日も、雷の日も通った。


次第に彼女と打ち合える時間が増えていく。


それが青年には嬉しかった。


そんな純粋な青年の気持ちはつゆ知らず、人々は口々に噂した。


あの剣聖の元に通う青年がいると。


そしてそんな噂など知るよしもなく、やはり青年は彼女に会いに行く。


そんな日々が続いたある時、青年の剣が彼女の服を掠めた。


それは文字通り服に剣先が触れただけだったが、彼女にさわれた気がした。


そこからの青年はすさまじかった。


目まぐるしい速度で走る彼女を追いかけていく。


追い求めて。


追いかけて。


追いつめて。


ある日彼女と互角の闘いができるようになった。


そこで青年は切り出す。


「僕が勝ったら結婚してくれないか」


剣聖は笑った。


緊張で天地がひっくり返っていた青年にはなぜ彼女が笑ったのか分からない。


そして剣聖はこう答えた。


「私に勝てたら考えてやる」


青年の心臓はもう限界だった。


当然、無残に負けた。


それでもやっぱり彼女の元へ向かった。


動揺を抑えることは出来ず、再起するにはしばらくかかったが、再び彼女と踊れるようになった。


だが、それでも彼女に勝つ事は出来ない。


雨の日も負け。


風の日も負け。


雪の日も負け。


雷の日も負け。


負けに負け続けた青年は気づく。


自分は人の模倣が上手かっただけに過ぎないと。


ただ昔から人の真似が上手かっただけ。


大人の真似をして神童と呼ばれる。


本の真似をしてあたかも才があるように扱われる。


今も結局、彼女を真似ている。


日々成長する彼女にとって、自分の動きは過去の彼女にすぎない。


なぜなら自分が模倣している間にも彼女は進むから。


過去の彼女では今の彼女は倒せない。


絶対に。


確実に。


彼女の成長が止まれば勝ち目があるのかもしれない。


だが、そんな日は到底来ないだろう。


人の模倣では原点には勝てない。


終わらないいたちごっこ。


青年はそんな事実に気づいてしまった。


それから青年は初めて剣を振るのを辞めた。


彼女の元へ向かうのも辞めた。


超えられない壁。


来ない未来。


負けを運ぶ過去の剣。


それらは青年の心を折るのに充分だった。




剣聖は苛立っていた。


久しく暇が訪れたからだ。


彼が来ている間は退屈がなかったし、むしろ楽しかった。


自身の成長を実感するのも。


彼の成長を見守るのも。


全てが楽しかった。


彼は退屈を吹き飛ばしてくれた。


彼だけが唯一相手になってくれた。


彼だけが対等だった。


そして彼だけが剣ではなく、自分自身を見てくれていた。


もはや彼なしの生活を考えることなど出来ない。


思いを巡らせていた時、剣聖はいつしかの彼の冗談を思い出して、とある決意をした。


それは巷で言われているように甘酸っぱい明るいものではなかった。


どちらかと言えば黒く、独占的で人に歓迎されるようなものではなかった。


それでも剣聖は決意した。


私もあれを彼に言おう。


彼を打ち負かしてここに迎えよう。


もし嫌がったのなら、持てる全てを使って彼を手中に収めよう。


そう決意した。



あれから何日が経ったか、青年は鍬を振っていた。


大したことではない。ただ親の仕事を手伝っているだけ。


そしてそんな大したことのない日々は、色味が落ちたように刺激が足りない。


その原因は分かっている。


脳裏に浮かぶのは彼女の顔。


幾日経とうと、その記憶が褪せる気配はない。


彼女の顔を見るだけで、この虚しい日々が色めき立つ確信がある。


だが、そうは言っても彼女に会う気にはなれなかった。


一歩にすら満たない程彼女の近くに迫っているのに、一生彼女に追いつけない。


むしろ彼女に近づけてしまったがゆえに、それは酷な事実となって青年に押しよせた。


ただ見上げるだけならどんなに楽だっただろうか。


もはや青年には何が何だか分からなかった。


絶望と否定が頭を満たして、考えることすらままならない。


そんな状態でただ親に言われるがまま鍬を振っている。




その日も青年は言われるままに村の祭りに参加した。


晴れやかな衣装を纏った娘達に酒をあおる大人たち。


親は神がどうとか豊穣がどうだとか言っていた気もしたが、青年にはどうでもいいことだった。


青年は虚ろな目でただただ祭りの火を眺めている。


そしてやっぱり彼女の顔が浮かんできては消えていく。


そしてそれがさらに虚無感を煽っていく。


鍬に逃げても、酒に逃げても、祭りに逃げても、例えそれが神だったとしても彼女の幻影は追ってくるのだろう。


追いかけていたはずなのに、いつしか追われている。


冗談にもなりはしない。


そんな自嘲気味の青年の元に、着飾った少女が近寄った。


見れば彼女の親であろう人物が後ろで様子を伺っている。


祭りに不つり合いな顔をしている自分に娘をけしかけたのだろう。


それがどうしてかは分からないが青年の心の琴線に触れた。


青年は意地悪く聞いた。


「君はどうして踊っているんだ」


少女は少し困った顔をしながら答える。


「神様に見せるためです」


なおも青年は問う。


「それに一番重要なことはなんだい」


やっぱり少女は困った顔をしながら答える。


「心を込めることだと思います」


それらの質問は全て彼自身が知りたいことだった。


それでも少女は答えてしまう。


しかもありきたりで誰かから教えられたような答えを。


自分は答えのない問いを抱えているというのに。


腹を立てた青年は重箱の隅をつつくことにした。


「舞や武の教えは無の心だ。それが一番己の力を発揮できて、いつでも安定するから。心を込めれば、込めた分だけ動きがぶれる。それでは美しい動きも台無しだろう」


少女は少し考え込んでから言った。


「私はそうは思いません。たしかに無心であれば一番実力を出すことができます。ですがそれでは自分を超えることは出来ません。心を込めれば確かにぶれてしまう。ですがそれは上にもぶれる可能性があります。自分の殻を破ると言うのはそういう時ではないでしょうか」


青年の思考が凍る


はじめは何を言っているのか分からなかった。


それでもいつしか氷は解けていく。


徐々に言わんとしている事が分かっていく。


もう青年の頭には絶望も否定も存在しなかった。


さらに幾度か少女の言葉を反芻した後、少女に謝罪と礼をして青年は走り出す。


向かう先は決まっている。


あれだけ頭を覆っていたものがない。


今までで一番体が軽い。


途中、拾った棒を振ってみる。


無心とはかけ離れた剣筋。


だが、依然と比べるまでもなかった


勝負の行方は誰も知らない。


だが、彼と彼女の行方は誰しもが知っている。



世紀の決闘を運よく見物出来た人物は呟いた。


我々ごときが摩天楼を理解することなど出来ない。


我々は摩天楼に夢を見すぎていたのだと。


そう呟いた。

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