第6話 少女は夢を見る

 フォイルに引かれ、ちょっと腑に落ちないまま私は自分の部屋に戻った。


「ふー、今日は一段と疲れたなぁ」

 さっきの二人の叫び声を聞いてまだ耳がほわほわ?してる。


 でも、この疲れも私のスキルが進化したからって考えると多少は幸せな疲れなのかもね。

 そうだ、明日の予定を考えようかな。

 んー……冒険者になるにはまず冒険者ギルドに行かなきゃだね。

 あ、でも、メイドギルドにも入ってるけど大丈夫なのかな?

 掛け持ち出来たら良いな~。

 私ここ辞めるつもりだから関係ないじゃん!

 おー一件落着?だね。


 ふふっ、冒険者かぁ。

 約3年前に諦めた夢をまた追えるとはね。

 18にもなって遅いかな?

 みんなは3年前には始めてるもんね。


 でも!私には進化したスキルがあるんだ!

 それを誇り?自信にして頑張ろ。


「ふわぁぁぁ……さすがに眠たいな」

 ≪目覚まし≫の端に書かれた時刻は0時。

 今日の疲れも相まっていつもより早い時間に眠くなってきた。


「アラームを……6時にセットしてと」

「おやすみ……」


───────────────────────────



<姉さま、どうやら喜んでくれたみたいっすね>


<ふふっ、そうね。私たちからのご褒美、気に入ってくれたみたいね>


<頑張ってましたもんね、この子は>

<でも、頑張ってる子なんて山ほどいるわけじゃないですか?>

<どうしてこの子を選んだんですか?姉さま?>


<だって、この子は15歳からバカみたいな環境で働かされてたのよ!?>

<そんな健気で可愛い子を【青春神】として放っておけないじゃない!>

<それに私の好みだし>


<あのー姉さま?思いっきり私情挟んでますよね?>

<【世界神】さまにバレても知りませんよ?>


<良いのよ。あの男は私に借りがあるから>


<【世界神】さまに借りって……え、なんですか?気になる!>


<ふっふ~それはね♪【創造神】さまと引っ付けt……>

 言いかけた途中で空間の穴から出てきた手に【青春神】の口が塞がれる。

<それは言わない約束じゃねーのか?リリアさんよ>

 現れたのは若く逞しい身体の男神。

 その身体からはとんでもないオーラが発せられていた。


<あ!【世界神】さま!>


<お、ルリアじゃねーか。大きくなったなぁ>

<それに、【世界神】なんて呼び方はよしてくれ?この女の弟なんだろ?ガイアと呼んでくれ>


<っ!はい!ガイアさん!>

 尊敬する神から名前呼びの許可を貰って嬉しそうにするルリア。

 と、それを見て不満をこぼすのは──

<あのー痛かったんすけど>


<それはお前が約束を破ろうとしたからだろ?>

 ──掴まれていた頬を摩っている、ルリアの姉のリリア。

 出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。

 そんな駄女神。

<口調変わってるぞ~>


<おっといけないわね。ま、でもアンタとルリアしかいない訳だしいいでしょう?>

 素の口調が出てしまったようだが、旧知の仲であるガイアと弟であるルリア。

 この2人の前なのであまり気にしてはいないようだ。


 2の話だが。


<ちょっと?私の事忘れないでよ?>

 ガイアが現れた穴を通り現れたのは、

<え!?クレアちゃん!?>

 天界一を誇る美貌。

 それに、リリアほどではないが、女性らしいフォルム。

<それと、あまり私の旦那をいじめないでくださりますか?>

 そう。ガイアの妻であり、リリアの親友。

 【創造神】クレアである。


 幸い、リリアはクレアとも旧知の仲であるため、素の口調を知られた事には問題ない。

 問題なのは、クレアが取った。いや、取っていた行動である。

<ご、ごめんね~クレアちゃん>


<ううん。良いの、あなたがみんなに隠してる素の口調、録音しておいたから>

 にやぁ。

 美しい顔と相まって逆に恐ろしくも見える笑みを浮かべたクレアは創造神とは思えない顔をしていた。


<そ、それは余りにも酷いよ?ねぇ!>

 焦りを顔いっぱいに浮かべるリリア。


<どうしよっかな~。うちの旦那にある借りってのを無くしてくれたら考えるよぉ?>


<で、でも、私のおかげで二人が結ばれたんじゃ……>


<あなたが勝手にしたあの子の事も見逃してあげても良いけどなぁ?どう?>


<あっ!はい!すいませんでしたぁ!!>

 一瞬にしてクレアの前にジャンピング土下座を決めるリリア。


 それを見て呆れ顔のルリアとガイア。

 これにて一件落着。と、なるところだが。


<あ!クレア!俺らの最初の目的を忘れてた!>


<あ、そうだわ!リリアちゃん、早くチャンネルを閉じて!>

 当初の目的を思い出し、慌てるガイアとクレア。


<チャンネル??>

 当のリリアはわかっていない様子。


<さっきあなたあの子の事をのぞき見してたでしょ?そのチャンネルが開きっぱなしで、こっちの様子が見えちゃってるのよ!>


<あぁぁぁぁぁぁぁ!!忘れてたぁぁぁぁ!!>

 急いでチャンネルを閉じるリリア。

<私、もしかしてやっちゃった?>


<ここは任しときな。幸いあの子は寝ているようだし、夢ってことにしといてやるからよ>


<ガイアぁ~頼りになるぅ>


<ったく、バカだな、相変わらず>



 こんな感じで今日も天界は賑やかです。


───────────────────────────


「っは!!!」

 え?なに、今の。

「夢、だったのかなぁ?」

「それにしてはリアルな夢だったような?」

 思い出そうとする度に靄がかかっていく様に思い出せなくなっていく。

「わかんないや。諦めて寝よう。」

「≪睡眠≫、≪二度寝≫」


 私はまた眠りの渦に飲まれていった。

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