出会い

「うぅ、ここは?」




 目を覚ました俺が見たものは、木造の屋根だった。そして、ロープでベッド拘束されていた。体をよじったり、してみたが、ロープが切れそうにない。仕方ないので、見える範囲で周囲の状況を確認してみるとするか。




 ここは、森ではなく、どこかの家のようだ。家の中には俺以外にいないようだ。俺の装備していた、武器とポーチ、バックバックは見当たらない。




ギギィ




 扉が開いた。




 咄嗟に身構えたが、この状態だ。あんま意味がない。




「気が付いたっすか?」




 入ってきたのは褐色肌でショートカットの若い女性だ。大災害がなかったら、中学に通っていてもおかしくないくらいの年頃だ。腰に銃を差している。彼女の手には水が入った桶と包帯を持っていた。




女は何も警戒せずに、こちらに近づいてきた。そして、優しく俺の体に触れた。




「……」




 女は、何をしたかというと、俺の包帯を取り換えたのだった。




「何故、助けた?」


「だって、あのジャンバを倒してくれたじゃないっすか~」


「ジャンバってあの兎熊のことか?」


「そうすっよ。ジャンバのこと聞きたいっすか?」


「あぁ頼む」




 彼女は手当しながら、先ほど、死闘を繰り広げた獣について話してくれた。


俺が今いる集落突如現れた獣らしい。物資の確保の為に狩りの邪魔をし、尚且つ凶暴で、怪我人が出て、早急に排除するべく、彼女が単騎で討伐に向かったのだとか。




 森でジャンバを捜索中に吹き飛ばされている俺を見たのだとか。




「で、なんで一人で出たんだ?」


「あぁ……そのことなんすけど」




 急に彼女が分が悪くなったのか、手を止めて、頭をポリポリとかいた。




「うちがどうにかしなきゃって、飛び出してしまったんすよ。お陰で村長にも大目玉をくらったんすよ」


「よく、あんな強敵に一人で立ち向かおうとしたものだな」




 正直、俺は驚いている。一時の思いで一人で立ち向かおうと思ったものだ。




「ところで、あのグレランはどうした?」


「グレポン君は村長にとられちゃいましたっす」




 彼女はえへへって舌を出した。




「その村長に合わせてくれないか?」


「あぁわかったっす。これが終わったら、呼んでくるっすよ」


「俺から行くことはできないか?」


「駄目っすよ。怪我人は安静にしないと駄目っすよ」


「なら、この拘束を解いてくれないか?」


「それも駄目っすよ。男はすぐどっかに行くっすから」




 成るほど、ジャンバにやられた男が抜け出そうとして、止められたのか。にしてはやりすぎではないか。よそ者だから、警戒するのも仕方ないと思うが。




「これで終わりっす。今から、村長を呼んでくるから、ちょっと待っててほしいっす」




 言い残すと、彼女は小屋から出て行った。


 改めて、自分の体を見る。あの女神象とジャンバにこっぴどくやられたものだな。我ながら自分が情けない。これからの旅が心配になる。生き残るには強力なコードを手に入れないといけないな。




 なんて、自分を戒めていたら、筋骨隆々の白髪の大男が彼女に連れられたきた。




「紹介するっす。村長っす」


「あぁ……よろしく頼む」




 村長は何も言わず、こちらに近づき、手を伸ばした。




「この状況で握手はできないだろうが」




 村長はガハハハっと大笑いし、動かせない俺の右手を両手を握った。




「いやはや。ルフが世話になったな。もう二度と会えなかったと思ったぜ」




 村長はガハハハっともう一度大笑いし、俺の腕をブンブンと振った。




「村長、病人っすよ。優しくするっすよ」


「こりゃ悪いな」




 村長は謝り、こちらの手を放してくれた。あのまま振られていたら手がもげていただろう。




「改めて、礼を言おう。そして、この小さな村にようこそ。歓迎するよ」


「そりゃどうも」




 村長は悪い奴じゃなさそうだ。暫く、この集落に世話になるのも悪くないな。




「ルフがお前とジャンバのキューブを持って帰ったのはびっくりしたぜ。あっルフから話は聞いている。よく、ジャンバを倒せたな。お前さんすげえなっ!!」


「正直、ルフがいなかったら、危うかった。こちらからも礼を言おう」


「さて、宴の準備はできているぜ」




 村長はパンパンと両手を叩くと、ルフは小屋の扉を開いた。


 すると、両手を持った男女が流れ込んできた。扉の奥にも料理や飲み物が机の上に美味しそうに置かれている。




「俺の為にか?」


「そうだ、存分に楽しんでくれ」


「一言いいか」


「なんだ?」




「そろそろ、拘束を解いてくれないか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る