120歳まで童貞・処女を貫いたら大賢者・大聖女になりました。そして輪廻の果てに二人は双子の兄妹になりいちゃいちゃするそうです。

琉水 魅希

プロローグ

第1話 120歳、大往生したら大賢者と言われました。

 「ご臨終です。」


 老人ホームの一室。

 ベッドに仰向けになって目を瞑っている一人の老人男性。

 辛うじて見える肌はどこを見てもしわくちゃで、みずみずしさは欠片もない。

 それでもベッドの周りには数人の老人ホーム仲間と職員と見られる数人の男女。


 身体の各部を確認した後に、在宅介護の先生に診断され死亡確認を受けた一人の老人。


 先月120歳になり、老人ホームで誕生パーティをしたばかりの老人の名は聖川真賢ひじりかわまけん

 親が所謂中二病患者であり、魔剣と負けんを兼ねて名付けられたその名前。

 しかし彼の人生が勝ちか負けかは誰にも判断は出来ない。。

 120歳を迎えたその日まで女性経験はゼロ。

 夜のお店にさえ行った事のない、純粋無垢。


 会社員としては高卒としては順調な出世で支店長まで上り詰めた。

 定年が70歳まで伸びた時代に定年まできっちりとお勤めを果たし、残りの人生は全国の温泉巡りに費やした。

 何分大金のかかる趣味も他になく、独り身だったために旅行に使っても貯金や退職金を使ってもまだゆとりがあった。

 

 100歳を超えた頃、流石に身体の限界を感じ、残った資金を使って老人ホームに入居する。

 後から入居してきた同い年の女性とお茶をするのが残った人生の楽しみだった。


 二人はたまに手が触れるとお互いに意識し合う程には仲が良かった。

 悲しくも性欲は枯れているために、これまで守って来ていた童貞をどうこうする気もおきるはずもなく。

 それでも二人は周囲の老人仲間からは夫婦のように思われていた。


 はよ結婚しろと言わんばかりに。


 しかし当の本人達にはそのような事を意識する事もなく、ただ同じ老人ホームで迎えが来る時まで笑って過ごせればいい。


 「来世ではもっと若い時に出会って青春を謳歌したい。」

 お互いにそのような事を口にしながら。


 親が中二病だったせいか、真賢もまた中二病を少し拗らせていた。

 真賢が来世でワンチャン的な意味で言ったその言葉を受け入れてくれた老人女性。

 彼女もまた若い頃は所謂ヲタクだったために、その言葉を真に受けていた。


 しかし真賢は先に逝ってしまう。老衰だった。

 その死に顔はそれなりに満足したかのような笑顔ではあった。


 果たして、勝ちか負けか。

 ただ、彼の心残りは一つだけあった。

 それを確認する事も出来ずに彼は逝った。




 真賢が意識のようなものに目覚めると、そこはどこかの1対1で行う面接会場のような場所だった。


 真賢が意識を集中させると目の前には一つ……一人の人型の姿を確認する。


 「私は輪廻を担当する、お主達生者だった者からすれば神のような存在だ。」


 「聖川真賢ひじりかわまけん。お主は童貞のまま30歳で魔法使い、60歳で大魔法使い、90歳で賢者と呼ばれる程の偉業を現世で成した。」

 「そしてこれは初めての事なので神々の中でも異例の事だが、120歳まで清い身体でいたお主には大賢者であることを認めよう。」

 真賢の意識はそれをただ黙って聞く事しか出来ない。

 たとえ中二病であってもここでツッコミを入れる程野暮ではなかった。


 「次の輪廻では地球の人間というわけにはいかないが……大賢者として活躍出来る世界の、一応人間として生を受けられる。」

 大賢者として生きていけるのならば120歳まで女体の神秘に触れて来なくて良かった、手を握るだけで赤面してしまう程初心で良かったと思っている。


 「そうさな……お主が若い頃に読んでおった……ラノベ?異世界転生?のような世界にな。文明的にはごった煮という感じで基本ベースは日本でいえば戦国の時代後期くらいかのう?」

 「武器や魔法を駆使して生き物同士が国や土地等を奪い合ったりもしておる、もっともそうそう大きな戦争のようなものがあるわけでもないがな。」

 

 「色々な種族がいる分、仮想世界好きの人間には面白い世界ではあると推察しておる。」

 「定番の冒険者とかダンジョンとかもあるでな。中二病?を拗らせていた事のあるお主達には楽しめると思うぞ。」



 そして真賢は輪廻の輪に従い次の生へと旅に出る。


 双子の妹を持つ兄として。

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