カサンドラはせせら嗤う
獅子鮫
追放
全てが続く予定だった。また、全てを手に入れるはずだった。
つい先週のことだ。我が父、リキュール・カサンドラは、いつものように王宮にて神の信託を授かり、王の補助を行うはずだった。しかし、その日の信託はなぜか間違っていた。父の信託は一度も外れたことはない。しかも有利に進めていた反乱軍との戦いについての予言であり、間違った予言によって3つの城と20万の兵を失ったという。
王と近臣は皆、父上の予言の責任を追及し、ついには死刑の判決を下してしまった。その結果私の家は取り潰しとなり、領地も没収され、いきなり家族共々露頭に迷うこととなった。家にあった財産で食料や宿の手配はできたが、次第に、民衆からの迫害が始まった。迫害はみるみる加速し、泊まっていた宿屋に火をつけられたり、殴り込まれるほどになった。数人で殴りかかられる程度なら、カサンドラ家の血筋が使う、「英霊術」で英霊の力を借りれば、難なく倒せた。だが、返り討ちにすることでだんだんと暴徒の怒りも高まり、ある日広場を覆い尽くすほどの人数で襲いかかってきた。
私と母上と兄上はひたすら逃げたが、逃げ切ることができなかった。
「先に行け!へっ、俺の最後の仕事だ。こいつら全員ぶっ飛ばしてやる!」
「兄上!だめです!!共に逃げましょう!!」
「ルール!!行け!!」
「‥‥ルール、行きましょう。」
「…………ッ」
兄上が捨て身で戦い、足止めをしてくれた。私は母上に手を引かれて深い森まで逃げてきたが、手を離してしまい、はぐれてしまった。深い森を必死で走り抜け、逃げ切った時に、私は神に祈り、予言を頂いた。その内容は、父上と兄上の死だった。母上は別のところに逃げ切れたらしい。私は何も考えられなかった。今の自分のことで精一杯だった。ただ呆然としていた。
とぼとぼと絶望と共に歩いていると、ふと明かりが見えた。走って森を抜けた先、そこにはある国の貧民街があった。貴族育ちの私が見たから、ではなく、普通よりも明らかに水準の低い暮らしだった。掘建て小屋に貧相な格好、地面は舗装すらされていない。だが、ここにたどり着いたのが、後から考えると幸運だったのだろう。
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