友情という名の魔法

貴春

第1章 「僕」の記憶

「ドン」っと、身体に衝撃が伝わったかと思うと強い痛みが体中に襲ってきて、僕は痛みと恐怖で泣いていた。道路は、真っ赤な赤色に染まっていた。僕の血で。

「あぁ、車に跳ねられたんだ。僕は死ぬの?」

 五歳にして、初めて死を感じた瞬間だった。僕は、もうこの先この世にいることはできないんだろうと悟った。もう、意識もなくなってしまいそう、そんな状態だった。

「早く、救急車呼んで!」

 周りの大人の人が、必死に僕のことを助けようとしているのが伺えたが、それは無意味なことだろうと僕は思っていた。

「だっ、大丈夫?」

 誰か知らないけど、同じぐらいの年の女の子が目の前にいた。

「ちょっと、目を閉じて」

「え?」

「いいからっ」

 僕は最後の力を振り絞り、目を閉じた。すると、彼女はよくわからない言葉を口に出し始めた。

「ミランガ アオ フルガ」

 すると不思議なことに痛みが嘘みたいに晴れて、さっきまで大量に出血していた足の血も止まっていた。何事もなかったかのように、僕の身体は車に跳ねられる前の怪我一つないきれいな状態だった。

「君は...」

「ミニガ フリジュゴウ ブルツ」

 次に目が覚めた時には、公園のベンチの上にいた。あの子は何者なのか、名前すらも結局はわからずじまいなのだ。どんな顔だったかも思い出すことができない。ただ、僕が今生きているのが彼女のおかげなのだということだけがわかった。

 名前も知らない彼女に感謝しながら、僕は今を生きている。

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