第34話 がんばるぞ〜!
翌日の昼休み。
時間もないため、俺はさっそく次の手に出た。
「ようし〜! がんばるぞ〜!」
隣の姫咲がふんすと気合を入れて片手を突き上げる。
眩しいまでの癒しオーラ。
ビッチが相手だからこそ、立花少年はあんなにも拒絶した。
それなら今度は、清純派超人気読モをぶつけてみようと言うわけだ。
「悪いな。SNSの方もあるのに」
最愛が不甲斐ないばっかりに……。
「ううん〜。そっちは時間がかかるものでもないから〜。それに、もう学園の生徒はたくさんフォローしてくれてるよ〜。宣伝バッチシ〜」
「マジか。すごいな」
俺が昔作った趣味垢はフォロー3人なんですが。ぜんぶ裏垢ですね、はい。
「参加してくれるって人も何人かいたよ〜。楽しみだね〜歓迎会。わくわく〜」
姫咲は嬉しそうに笑顔を浮かべる。
これで歓迎会の体裁は保てそうだ。
しかし立花先輩が本当に歓迎会を企画した理由は、弟や、人間関係に困っている生徒にあるのだろう。
俺は重要な任務を任されているのだ。
頑張らなくては。
会話もそこそこに、一年生の教室へ向かった。
今回はもう立花少年の顔も分かっているので、すぐに姫咲が少年の前へ出る。
「あの〜、わたし、姫咲萌香って言います。立花藍くんだよね〜?」
「え? ひ、姫咲萌香さん!? 読モの!?」
「あ、うん。そうだよ〜。ちょっとお話いいかな〜?」
「は、はいもちろん! よろしくお願いします!」
思った通りだ。
少年は最初こそ昨日と同じ展開に訝しむ様子を見せたものの、読モの姫咲萌香とわかった途端に表情を改めた。
頬を染めて、明らかにデレデレしている。視線はとある一点に向いていた。
やはり男を真に誑かすのは天然の清純美少女。あとおっぱい。
男ってやっぱりチョロいのかなぁ。
昨日と同じく、目立たないよう空き教室へと移動する。
俺もまた、昨日のように教室の外に身を潜ませた。
「そ、それでその……僕に何の用事でしょうか」
「あのね〜、立花くんに、何か悩みがあるんじゃないかと思って。少しお話を聞けたらなぁ〜って」
「な、悩み……? そんなこと、誰が……」
「それは、あなたのお姉さん。わたし生徒会に入ってね〜、カイチョーとも一緒なんだ〜」
「そ、そうなんですか……姉ちゃんが……」
最愛とは違い、歓迎会のことには触れず少しずつ自分のことを話すようにしながら会話を進めていく姫咲。
立花先輩の名前を出すと、少年はバツが悪そうに視線を背けた。
「お姉さんに話せないことでも、わたしになら話せないかな〜?」
「そ、それは……」
「ダメかな?」
「……わ、分かりました。姫咲先輩になら、お話します。むしろ、その、相談にのってもらえますか?」
さすが天然。やはり天然。
人の心を動かすのは純粋な想いだ。
少年は心を許したようにひとつ息を吐いて、頷いた。
「うん! 任せてよ〜! そのためにわたし達は来たんだから〜!」
満天の笑顔を咲かせた姫咲はこちらへ手を振る。
え? 俺?
驚いて思わず顔を出してしまう。
「え、あの人は……?」
「同じ生徒会の、天川スズメくん。1人より、2人だよね〜?」
「そ、そうですか……まぁ、姫咲先輩が言うなら別にいいんですけど……」
少年からしなら軽い寝取られ気分じゃないかなぁとか思ったのが、意外にも俺の存在は簡単に受け入れられた。
そう言えば「心に決めた人」がいると昨日言っていた。
それは少なくとも姫咲ではなく、今もその心は揺れていないのだろう。
なんだ……あんなにデレデレしていながら……。
可愛い顔してるくせに漢じゃねえか……。
「まぁ、よろしく。俺はただの壁だと思って、姫咲に話してやってくれ」
「え〜? そんなことないよ〜。天川くんとっても頼りになるから〜。去年はね、わたしのことも助けてくれたんだよ〜?」
「姫咲先輩のことを……?」
「うん! だから大丈夫〜!」
姫咲は自信満々に豊満な胸を張る。ブルンブルン揺れる。
「「(おっぱい……おっぱいだ……)」」
心の声がリンクするのを感じる。
余計なことを言ってくれたなぁ……とも一瞬思ったのだが、俺も少年も揺れる幸福に心を奪われていたので問題ない。
「そ、それじゃあ相談とやらを聞こうかメロンパン……!」
「そ、そうですね……! お話ししますマシュマロプリン……!」
おっぱい天国から意識を取り戻した俺と少年は慌てて咳払いをしつつ、初めての共同作業により自然に話題を移した。
これでもう俺たち兄弟だ!
着実に弟様と仲良くなって地盤を固めたい。
「ん〜? 甘々〜?」
明るい茶髪を揺らして首を捻る姫咲を横目に、立花少年のお悩み相談が始まる。
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