第2話
ユミが来なくなり、ケンタの心は腐っていた。
腐敗した心からはカビが生えて生きているのか死んでいるのか解らないくらいになっていた。口からはドス黒い液体が零れ、身体中にフジツボが付いて、内臓はベッドに染み付いている。
ユミは悩んでいる。
腐りゆくケンタを解りながらも決めかねていた。
一人乗りのバイクに乗るケンタ…。大きなモノを創り上げる為にどうすればいいのか……。
暗闇を歩き続け疲れ果て伊弉諾の心が折れる寸前ー目の前に菊理媛姫が現れた。
「貴方の心が闇だから、伊弉冉を見つけられないのですよ」
「……」
「貴方自身が心に灯りを灯さない限り伊弉冉を見つけることは出来ません」
「……」
「貴方が伊弉冉を想う心は何よりも掛け替えのないモノなのですから、貴方自身が貴方を見つめてください」
「……そうだった……」
伊弉諾は跪いた身体を力強く起き上がらせたー。
ケンタの頬をアズキとアンコが優しく舐めている。
ケンタは目を開けた。
目の前には青空にゆっくりと流れる雲、そよ風に揺れるススキ、笑っているように見える川の流れー。
ユミの中の何かに電気が走ったー。
二人は魂の中で何かを感じた。
二つの進むべき道を見つけたように思えた。
道は真っ直ぐではなく、曲がりくねったり、上り坂であり下り坂でもある。
その旅路の先、誰にも解らない所を目指す事こそが目指す場所だったのである。
伊弉諾は黄泉の国の入口で伊弉冉を待ち続けた。
朝陽が登る頃に入口から菊理媛姫と伊弉冉が現れたー。
伊弉諾の瞳から落ちた一粒の涙は輝きながら地面に落ち、穏やかな川になり街になり人々の暮らしの支えとなった。
ケンタとユミはお互いの中にゼロ磁場を創り再び会えることを願い握手をした。
おわり
マユケン 伊弉諾&伊弉冉 門前払 勝無 @kaburemono
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