第21話 婚約者増えました

 初日から色々あった三ヵ国会議は会議が始まってからは特に問題無く進んだようで

 無事に終了する。

 会議の内容は他国の情報、各国内での問題に関する意見交換だ。

 ボクはまだ会議に参加できない子供なので聞いた話でしかないけど

 特に注目すべき異変等は起こっていないようだった。

 

 会議以外ではユウがアイディアを出した服とボクが製作に関わってる魔法袋に話題が行き御土産に渡す事になっている。

 服のほうはワンピースだけじゃなく甚平も用意している。

 これはボクが前世で甚平を愛用してたのでユウに頼んでデザインを描いてもらい新たにシルヴィさんに製作してもらったもので男性用・女性用、両方用意してある。

 両親にも楽でいいと好評だったので用意した。

 公式の場ではもちろん使えないし国の代表だから使う機会は少ないとは思うのだけど。

 

 それからうちのメイド達が着ているノースリープ、ミニスカートのメイド服も好評でうちのメイドにもほしいということなので追加で出来上がり次第送ることになってる。

 男性陣に好評なのは予想していたけどアリーゼお姉ちゃんとシャンゼ様までほしがるとは思わなかった。『使えるから』と二人とも言っていたがナニに使うのかは聞かずに置いた。

 

 各国との転移魔法陣が繋がり各国の代表達が帰国の途に付く。

 だけどボクはその転移に付いて行く事になる。

 理由はボクが魔法陣無で転移可能な事を話したのから。

 その長距離転移魔法≪ワープ≫は一度行った場所にしか行けないので

 今回の転移魔法陣に便乗することになったのだ。

 

 ダルムダットに行った時は


「いいか、ジュン!アイを泣かしたら殺しにいくからな!」

 

「アイを頼んだぞ、ジュン。それから今度また全力で戦おう。楽しみにしてるぞ」

 

「はい…」

 

 アイの事はともかくもう一度戦うのは勘弁してもらいたい。

 転移できるようになったのだからちょくちょくアイを連れてくるようにとも念押しされた後、エルムバーンに戻り、今度はシャンゼ様とフレムリーラに行く。

 そして別れ際に爆弾発言を頂く…

 

「みな、聞きなさい!この度、私シャンゼ・フレムリーラはこのジュン・エルムバーンと婚約するに至りました!」

 

「え」

 

 出迎えに来ていた城の使用人や家臣の人達の前で突然の発表。

 聞いてないよ?聞いてないよ?

 

「ど、どどどどどうゆうことですか!?」

 

「ん?言葉の通りよ?この数日間、君を見てて、君ならって思ったの。大丈夫よ。アスラッド様やエリザ様はもちろんアイさんやガウル様にアリーゼ様にも御許可頂いてるわ。詳しくはアスラッド様とエリザ様から聞いてね」

 

「突然過ぎませんか!?」

 

「まぁまぁ。流石にジュン君が成人するまでは婚約のままだし、今すぐにってわけじゃないから。ゆっくり心の整理をつけて頂戴。あ、いつでも転移できるのだしいつでも遊びに来ていいからね。泊りにきてもいいわよ?」

 

 シャンゼ様は結構強引な人だったようだ。

 しかも周到。有無を言わせない状況での告知…。

 全て後手に回っている。

 このままここにいても事態は好転しそうにないし戻ろう…。

 

「帰ります…」

 

「そう?このまま泊まっていってもいいのよ?私の部屋で寝ればいいから」

 

「いえ!今日は帰ります!」

 

「あら、そう残念。じゃ御土産ね」

 

 チュっと。何かほっぺにやわらかい感触が…。

 

「じゃあ、またね。転移魔法陣は気軽に使えないからジュン君から会いにきてね?」

 

「はい…」

 

 これ以上ここにいたら周りの男性陣の視線で殺されそうだ。

 ここはさっさと退散しよう。そうしよう。

 

「では、失礼します…」

 

「ええ、またね」

 

 にこやかに手を振るシャンゼ様にボクも手を振り応え転移する。

 戻った先ではニヤニヤした両親と複雑な顔をしたアイとユウがいた。

 

「で?どうゆうことですか?説明してくださるんですよね?きっちりと」

 

「まあ、そう不機嫌な顔をするな。ちゃんと説明するが場所を移してからだ」

 

「黙ってたのはごめんなさいねえ」

 

 場所を父アスラッドの私室に移しシャンゼ様との婚約の件を聞く。

 

「シャンゼが未婚のまま魔王になったのは知ってるな?」

 

「はい」


 フレムリーラの先代魔王は病で急逝している。

 シャンゼ様の婚約者を決める前だったため未婚のまま魔王に就任したのだ。

 

「故に急ぎ婚約者を決めようと周りが騒いでいてな。だがフレムリーラほどの大国の魔王の婚約者ともなるとなかなかな。いないことはないんだがシャンゼが納得できる相手がいなくてな」

 

「シャンゼちゃんはね、本当は魔王になりたくなかったのよ」

 

「え…そうだったのですか?」

 

「ええ。だからね、結婚相手だけは自分で見つけたいって以前から言ってたの。せめて結婚くらいは自分の思うようにって」

 

「それにシャンゼの両親はな、わしらの恩人でもある。冒険者時代のな。シャンゼに力になってほしいと頼まれてもいた。どうか受けてやってくれ」

 

 そう言われると…断りづらい。

 でもなんでボク?

 

「お前とガウルの戦いっぷりにホレたんだろう。わしらから見ても惚れ惚れする戦いだったぞ。流石わしの息子だ」

 

「とどめは義姉さんを手玉にとるあの手腕よ。アレが決め手だったんだと思うわ」

 

「えええ…それはないでしょう…」

 

 あれはどちらかと言えば軽蔑される事案なような…

 

「そんな事ないわよお。あの場にいた女の子の何人かはジュンに熱い視線を送ってたしい」

 

 あれは軽蔑のまなざしではないだろうか…

 

「アイも許可したって言ってたけど」

 

「ええ。まあね。ほんとは嫌だけど仕方ないの。シャンゼ様の心情は解るし、ウチらにも事情があるから」

 

「ウチら?事情?」

 

「内緒」

 

 内緒なのか。

 さっきから黙って話を聞いてるユウに視線を送るとすぐに目をそらされてしまう。

 ユウもなにか知ってそうだったけど教えてくれないか。

 

「まあシャンゼは美人だしいいじゃないか。お前だって美人は嫌いじゃないだろう」

 

「そりゃあまあそうですが…」

 

「それに今はまだ、アイと同じく婚約だ。そう深く考えるな。ただシャンゼにはたまに会いにいってやれ。お前もシャンゼを知る必要があるだろ」

 

 おお、パパ上がまともな事を言ってる。

 こうゆうとこはまともなんだなパパ上。

 いやまあ見た目が怖い以外は案外まともかなパパ上は。

 

「わかりましたよ。でももう勝手に婚約者を増やさないでくださいね?」 

 

「ああ、わかった。だがお前ならもう二、三人増えたところで問題なさそうだし、増えそうだがな」

 

 ニヤニヤしながらそんな事を言うパパ上。

 勘弁してください…いやほんとマジで。

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