誕生日


 想いを言葉にすると

 私の中から『好き』がひとつ消える

 それで、心が少し軽くなる


 私の中にある『好き』たちは

 硝子の破片のように綺麗で透明で

 あなたと出会うたびに内側から私の胸を突き刺し

 声を上げたくなるほどの痛みを生む


 二人が『好き』を口にする度に

 苦しみや痛みは消え

 そのうちに何も感じなくなり

 あれ程までに辛かった痛みが、愛おしくなってくる


 消えてしまった『好き』を取り戻すことはできない


 言葉で伝え合うことでしか

 確認できない愛なんていらない


 誰かに見せつけることでしか

 続けられない愛なんていらない


 二人だけが知っていればいい

 感じていればいい、信じていればいい


 『好き』という想いは、きっと無限じゃない

 そこら中にばらまいたら、すぐに無くなってしまう


 だから、年に一度の、あなたの誕生日にだけ贈りたい

 だから、私の誕生日にも一つだけ下さい


 飾りのない、ひとことを

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る