夏の獣

詩人

第1話 三季に感けて

 宇宙における地球は、生物が存在することの出来る環境条件が揃った完璧な領域内に在る。

 そして地球における日本は、北緯35度と四季が判然はっきりとした場所だ。

 四季──所謂いわゆる春秋冬は、我々日本人の心に強く根付いた文化と言っても過言ではないだろう。

 それぞれの季節にそれぞれの、古来から伝わる文化があり、外国からの旅行客も季節ごとに表情を変える風景に思いを馳せることもしばしば。

 私たちは、五感の全てで季節を感じている。それは気温であったり、もみじの葉色の移ろいであったり、あるいは街を行き交う人々の装いであったり。

 私としては、四季があった方が断然良い。極端な寒さにうんざりすることはあるけれど、それも北欧に比べれば極端なわけがないし、四季は和文化に繋がるため、私は好きだ。


 しかし、四季とはなんだ──?


 四季と呼ぶ癖に、季節は三つしかない。

 春、秋、冬。その三つだ。

 わざわざ四という数字が入っているのだから、四つの季節がないとおかしいはずだ。

 だけど、私はその季節を知らない。きっと過去にはあったのだろう。つまり言い方を正せば、ということになる。


 こんなことを思うのも、衣替えのアナウンスをする天気予報を見たり、紅葉こうよう観光のニュースを見てなんとなく思い出すだけであって、特別な想いは何一つない。

 だけど、彼奴あいつは違った。


 本気で、「 」を取り戻そうとしていた。

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