ジューン・ブラッド

@TripProject

生贄の花嫁

『これは昔、どこかであった悲劇である』


村の広場に並べられた5つの棺

1つ目の棺はからの棺

崖から落ちたガラス職人

体はどこにも見つからない

2つ目の棺は、老いた老人

床の上でひっそり腐り死んだ

3つ目の棺は、見習いメイド

時計塔から落とされて、潰れたトマトになっちゃった

姉は絶叫し神を憎んだ

4つ目の棺は、村の門番ナイフで刺された大男は顔を青ざめ口から血を吐いた

休憩室はとても綺麗だった

5つ目の棺は、可愛らしい女の子

川で溺れた少女のすぐ側で、彼は涙し懺悔する

真っ赤な絨毯の上、やつは笑って駒を置く

白のナイトが黒のクイーンを弾いた

鏡に特徴的な赤い髪が映りこんだ


村で流れた噂では黒いあいつがあの人たちの死ぬ直前、絶対居たらしい






貴方の目の前には全身真っ黒なフードを被った人がいます。

顔は隠れて見えず男か女かの判別もつきません。

そして自分が以前、何をしていたかを考えますが思い出せません。

あたりを見回すも見覚えのない、綺麗な屋敷の一室に困惑するあなたに相手は話を切り出しました。


「突然ですがあなたには、とある村で起こった悲劇を解き明かしてほしい。なぜあのような悲劇が起こってしまったのかを。」

あなたは、異常なほどあっさりそれを承諾しました。

すると相手は話を始めた。

「そうそう、あの村では奇妙な伝承があったんだ」

『村に災い降るとき、6月6日儀式の間に、花嫁を捧げよ。

失敗は、許されない。___初代領主の日記より』


「それでは話そう『これは、ダレカが見た物語』」


            

お気に入りの花畑 彼にのせた花かんむり

恥ずかしそうな横顔は相変わらず可愛いらしい

そう言った私をセバスは面白そうにたしなめる

包帯で全身ぐるぐる巻きでもそれが分かるのはなんでだろう?

そんな思考を遮るようにセバスの紅茶は出来上がった

おいしい懐かしい味

母様と同じお茶の味

そんな紅茶を飲む日常をこぼしたインクが黒く染めた

領主が娘を呼び出して何やら言い争っている

そうして少女は生贄の花嫁となった

           

5月31日、暁が顔を出すと同時、旅人が門をたたく

村人たちは怪しい男を警戒している

しかし、妊婦だけは旅人を歓迎した

崖に消えた夫と同じ顔をした旅人を

けれど息子は男を睨み付けている

花嫁は騎士と一緒に最後のデート

幼馴染に会いに行くそうだ

元気な領主の娘、幼い頃に母と燃えた兄、生真面目な騎士、

優しい姉の服屋、おっちょこちょいな見習いメイドの妹、引っ込み思案な鍛冶師見習い

服屋の姉は花嫁を着つけると涙を流して花嫁を抱きしめた

どうしてだろう?

鍛冶屋の息子は朝からずっと銀のナイフを無心で打つ

別れができず、悲しむ花嫁

騎士はただただ傍にいる

広場の棺に花を手向ける 彼女はきっと痛かったよね

教会の墓に花を手向ける これが最後の花になる

夕暮れ、花嫁にお迎えが来た

そのまま、騎士とはお別れして北の洞窟に引きずられる



腐敗臭の満ちる牢屋

足を切られた花嫁はただただ闇を見つめている

6月1日、真っ暗闇で彼女は悪魔と出会った

足はそのまま腐り落ちた

6月2日、執事の声が聞こえる

必ず助けますからと

彼女は何も見えなくなった

6月3日、亡くなった兄の声がする

助けるからな、絶対に 

とうとう終わりが近づいたのか

嫌な臭いがしなくなって少し気分が良くなった

6月4日、びしょびしょの騎士が来た。もう寂しくない

少しドロッとしていた彼に、何をしたらそうなるのと

久しぶりに笑った、彼もいっしょに笑った

6月5日、花嫁は騎士に告白した

彼は優しい声で返事した

6月6日、は来なかった

         

村中は大混乱

花嫁と騎士が死んだ!

刺された花嫁と血まみれの騎士

牢をのぞいた領主は怒り、青ざめ、笑った

鍛冶屋の息子が居なくなったぞ!

発狂する服屋を執事が強く強く抱きしめた

落ち着けと領主は周辺を調べるように言う

花嫁の心臓をひと突きした銀のナイフ

洞窟の入り口に落ちていた血まみれの騎士の剣

騎士は切り傷が少ない

崖のすぐそばは何故だか血が飛びちっていた

日が暮れていく


それでも悲劇は止まらない、村の広場で悲鳴が響いた

服屋が噴水の中で横たわっている

首元の縄の痕、苦痛に歪む顔

執事が急いで引き上げるも遅かった

噴水の水がわずかに黒く染まったことに気づいたものは居なかった

誰の仕業だ!殺されるぞ!探し出せと血祭パーティーの始まりだ!

斧持て、鍬持て、剣を取れ!

あいつが怪しい、こいつじゃないか

魔女裁判の始まり始まり

いつの間にか領主は切り殺されていた

炎のせいだろうか執事の髪が赤く光る

村は炎に包まれて、旅人は妊婦と息子を連れて逃げ出した

追いかけてくる狂人群衆

川に落とされた息子に妊婦は手を伸ばす

村は潰れたトマトだらけ

妊婦もいつの間にか首から下が無くなっちゃった

殺して殺されてはもう終わり

だって村には死体しかないからね

          

「どうだった?なぜ村が滅んだのか分かる?」

楽しそうに話す目の前の人間にあなたは疑問に思いました。

「どうしてそれを、あんたが知っている?」

ニヤリと口を歪ませる目の前の何かが答えます。

「そうだ。もう一つ問題があったんだ」


『私は誰でしょうか♪』


目の前の何かはじっとあなたを見ています。

これは暫く帰れそうにないなと、あなたは相手に見えないように、口元を手で覆い、笑いました。

「お腹がすいた。何かくれ」

あなたは図々しく相手に言いました。

「・・・はは!いいですとも!」

相手はあなたのことが気に入ったようです。

そしてあなたはまともじゃなかったようです。

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