第84話 三択問題
「メリアンさん、好物のザラメ
ミシェルさんが言った。
部屋から人の気配は感じるが、メリアンは出てこない。
うーん。
「メリアンさんが食べないなら、皆で食べちゃいますよ」
ノラさんが言う。
「私が今、食べる。大丈夫、全部食べれる」
キンバリーが言った。
バタン。
「ちょっと待って!」
扉が開いて、メリアンが出てきた。
よし。問題は1つ解決だ。
おやつタイムの後。
「僕はメリアンに3つの行き先を提案します。
1つ目は『三槍の誓い』、2つ目は『雷の尾』、3つ目は『魔術師クラン』」
僕は『青き階段』のロビーで、レイラさんの依頼の完了報告をすることになった。
テーブルには、僕の他に、レイラさん、メリアン、ミシェルさん、そしてハロルドさんが座っていた。
僕の後ろに立つのは、キンバリー。そして、ナガヤ三兄弟。
ハロルドさんの後ろには、ウィルさんがいる。
「3つとはやるじゃない、クリフ・カストナー。
報酬を1万ゴールドオマケして、3万ゴールドにしてあげる」
レイラさんが言った。
「ありがとうございます」
僕は冷静に答えた。
ほめられようが、3万ゴールドだろうが、割に合わないクエストであることは同じである。
とは言え僕は、割と清々しい気分だった。
先程のトビアスさんとの会話で、メリアンに関する感情のしこりは、ほぼ消えた。
理論と感情は一致した。
メリアンが入れば『三槍の誓い』はもっと強くなると思う。
また、僕は、リーダーとしてメリアンに公平に振る舞えると思う。
もちろんメリアンを正式にスカウトすることに関しては、ナガヤ三兄弟にもキンバリーにも合意済みである。
コイチロウさんは、
「リーダーがそう言うなら良いと思うぞ」
コジロウさんは、
「トラブルメーカーも悪くない」
との返事だった。
キンバリーはちょっと笑って、頷いただけだ。
ただ、メリアンにはちゃんと3つの提案をすべきだろう。レイラさんの依頼だしね。
メリアンが断ってきたら……、その時はしょうがないさ。
「クリフ・カストナー、つまり私が『雷の尾』にスカウトされたから、手放すのが惜しくなったわけ?」
メリアンが言った。
「そんな感じかな」
そう言うことにしておこう。親父のことは秘密だ。
メリアンは僕をじっと見る。なんか疑っている?
「もう1つ、さっきハロルドさんから話を聞いた通り、メリアンの脚力と言うか、歩く力について、
僕は追加した。
我ながら、完璧な理論武装である。
「ねぇクリフ、こういうのってタイミングがあるでしょ?今さらって言うか、もう遅いって……」
「メリアンさん、私はメリアンさんとダンジョンに行きたい」
メリアンの言葉を遮って、キンバリーが言う。
「……言うのが本来なんだけど、今回は『特別に』前向きに検討してみるわ」
メリアンが言った。
「それで良いと思うよ」
僕は答える。
「メリアン殿、先程説明したが、クリフ殿の上級治癒術は、ダンジョンの中で使うのには、リスクがあるのだ。
だから、『三槍の誓い』は治癒術師を募集しておるのだ」
コサブロウさんが言った。
「それはもう聞いたわ」
メリアンは答えた。
メリアンは、何か微妙に不満があるようにも見える。しかし、これは無視である。
ここで、メリアンのペースに巻き込まれるとろくなことにならない。
「メリアン、家に帰る気がないなら、この3つで決めてちょうだい」
レイラさんが言った。
「えェェー」
「ここで決めないなら、お金返しなさい」
レイラさんは容赦ない。
メリアンの扱いとしては、これで正解である。
メリアンは口を尖らせて、でもとか、考えたいとかブツブツ言っている。
ここで、ハロルドさんが発言した。
「レイラさん、我々『雷の尾』は『三槍の誓い』と合同で
メリアンには、とりあえず同行してもらい、その後決めるので良いと思う」
後ろでウィルさんがうなずいている。
「その場合、メリアンはどこのパーティーの所属で行くわけ?」
レイラさんは聞いた。
「メリアンが今決められないのであれにば、暫定で『雷の尾』の所属で良いのではないか」
ハロルドさんは答えた。
なんだか、ハロルドさんに主導権を取られそうだな。
ここは、いちおう反対すべきか?でも反論の糸口がつかめない。
「ふむ。それで良いわね、メリアン?」
レイラさんは言った。
「あ、はい」
メリアンは答えた。
仕方がない。現時点では、ハロルドさんは僕より上手なんだ。
「レイラさん、ハロルドさん、僕もメリアンの意思尊重で良いと思います。
あと、改めて言います。
僕は言った。
合同パーティーについても既に皆に話してある。
ナガヤ三兄弟とキンバリーも行く気満々だ。
「ただ、今回の探索で出る聖属性の魔石についてです。
大きいものから交互に優先所有権を認める形でお願いします」
これは、トビアスさんのアドバイス通りだ。
これで、1番大きい魔石は『雷の尾』に、2番目に大きい魔石は『三槍の誓い』に所有権が渡る。
「承知した。それで良いだろう」
ハロルドさんは言った。
ちょっと残念そうな顔をしたかな?
ううむ、イケメン・ポーカーフェイスは、良くわからない。
じゃあ、とレイラさんは立ち上がる。
「ええ、もうおしまい?」
メリアンは言った。明らかに不満そうだ。
「いいや。
これから僕はハロルドさんと契約書を作ることになると思う。メリアンも同席して欲しい」
おそらく、メリアンは独自の契約書を作ることになる。
「えェェー」
メリアンはすごく不満そうに口を尖らせた。
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