第82話 『雷の尾』ハロルドの提案
「メリアンを『雷の尾』で預かるわけですか?」
僕は思わず聞き返した。
雷の尾は既に6人パーティーだ。
メリアンが入れば、
「そうだ。どれくらいの期間になるかは分からないが。
だが、とりあえず、
メリアンのことは、メリアン本人のいない所で決める訳にもいかないし、とハロルドさんは続け、僕の向かいに座った。
「分かりました。まず
メリアンの行き先については、僕の考えもまだ固まっていない。
単純な問題から片付けよう。
「これは噂の段階だが、
ハロルドさんは話し出した。
「また何故?」
「危険だからだ」
「は?」
僕が記憶している限りでは、
「事実、死者も出てるし、重傷者も出てる。
第三層のフィールドダンジョンを踏破した後で、高レベル
状況の変化に対応できない冒険者が多いようなんだ。
あそこまで聖水を持ち込むのも大変だからな」
「……それは、知りませんでした」
僕が
……メリアンで頭がいっぱいだったし。
「冒険者が、冒険の途中に死ぬのは自己責任だよ。気に病む必要はない。
大量の聖水を運ぶ手間を、惜しんだ冒険者も多いようだし」
「はあ。ありがとうございます」
まあその、ハロルドさんが思ってるほどは、僕は気に病んでいないような気がする。
そう言う性分なのだ。
「その時点では、冒険者ギルドも動く気はなかったようなんだ。
だが、きちんと装備を整え、準備をしたBランク冒険者パーティーでも被害に合う者が出てきた」
「それは……」
確かに、それでは冒険者ギルドの内部でも、いろいろな意見が出てくるだろう。
「
彼らとしても、自分達の家に突然冒険者達に踏み込まれたら、変わらざるを得ないだろうな」
まあ、その通りである。
しかし、冒険者はやって来る。それが冒険者と言うものだからだ。
「しかし、聖属性の魔石が出るダンジョンは貴重ですよ。そう簡単に閉鎖しますかね?」
聖属性の魔石は貴重である。
世界は、ロイメのように魔術師がたくさんいる場所ばかりではない。
そんな場所では聖属性の魔石を用いた武器は、対アンテッドにとても重宝される。by魔石商人。
「冒険者ギルドは、お宝を前に手をこまねいている連中ではないさ」
ハロルドさんは言った。
「つまり、
僕は言う。
「その通りだ」
ハロルドさんは青い目を細め、軽く笑った。
普段は、
そして、冒険者ギルドにとって都合の良い時期に(年に1度くらいか)、封鎖を解いて、
もちろん、その時は、聖水の運搬などで冒険者ギルドも全力でサポートするだろう。
そして、聖属性の魔石は「冒険者ギルドが決めた値段」で買い上げる。
こんな感じだろうか?
万が一、冒険者達が反発して協力しなければ、ギルドはロイメの衛兵部隊や神殿などに協力を要請することもできる。
冒険者達はそうなると困るので、ギルドに協力せざるを得ない。
最終的には、魔石の買い上げ価格を巡る、冒険者とギルドの条件闘争になるんだろうな。
「分かりました。
自由に
冒険者ギルドは、サポートと引き換えに、
今のような一攫千金は狙い難くなる。
ハロルドさんが急ぐには理由があるのだ。
ハロルドさんは、僕達『三槍の誓い』を誘ったのは、
ついでに僕達は、ダンジョンの場所も知っている。
報酬は人数による等分を提案された。
ただし、Lv2以上の聖属性の魔石が出た場合、優先所有権は『雷の尾』が持つ。
この条件を受けて良いのか?正直僕には経験が不足している。
「条件については、パーティーメンバーと相談させて下さい。
皆、意見があると思うので」
これは、判断に困った時はこう言えと、トビアスさんに教わったそのままである。
「分かった」
ハロルドさんは、ちょっと残念そうに答えた。多分この返答で良かったんだろう。
おそらく『三槍の誓い』は『雷の尾』と一緒に、
そう僕は算段をつけた。
僕達『三槍の誓い』だけで行くより効率が良いし安全だろう。
今教えてもらったのだが、『雷の尾』では、イリークさんとハロルドさんが、聖属性の攻撃魔術を使えるらしい。
僕達だけで行くより攻撃力は大幅にアップする。
もちろん、ナガヤ三兄弟や、キンバリーと相談する必要はあるが。
問題は。
「メリアンについてだが」
ハロルドさんは言った。
「魔術師クランに出すにはもったいない人材だと思う。
ホリーも言っていたが、やる気はあるようだし」
ハロルドさんは続ける。
「でもその、トラブルメーカーなんですよ」
僕は言う。
『青き階段』でも、メリアンを預かりたいと言うパーティーは今のところない。
「メリアンは、冒険者になってから安定したパーティーに所属したことがないようだ。
それで益々不安定になっている。
冒険者としての経験を積んで、様々な事態に対処できるようになれば、もう少し精神的に安定するだろう」
ハロルドさんは言った。
「……まあ、そうかもしれないですが」
シオドアも似たようなことは言っていた。
「メリアンの脚力が不安なようだが、これについてはホリーも冒険者を始めた時、苦労したんだ。
それでだが……」
そして、ハロルドさんはさらに話し始めた。
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