彼氏の過去と叔母さんの笑顔

 あれから五日、私は、色々な人に私とせーちゃんのことを報告しに行った。

 せーちゃんに助けられた人は、中にはあっそうとしか思っていない人もいたが、多くの人がせーちゃんの飛び降りに悲しんで、私に怒りをぶつけてきた。せーちゃんの善意は純白だと、誰が見ても分かる態度だった。

 せーちゃんに助けられた人達を見るだけで、私の犯したことを後悔した。

 私がこの人達を悲しませていると、胸が締め付けられた。

 もし、せーちゃんが善人でなくても、私のしたことは、多くの人を悲しませ、傷つける行為だ。

 私はただただ後悔した。

 

 あの時せーちゃんにちゃんと相談していれば、道を踏み外さずに済んでいた、せーちゃんが飛び降りずに済んでいたんだ。私は本当に愚かだ。

 

 一番苦しかったのは、せーちゃんの叔母さんに報告したときだった。

 私は、殴られる覚悟で浮気したことを告げた。

 「せーちゃんが飛び降りたのは私のせいです。私が、せーちゃんがいながら、他の男の子と行為をしたために、せーちゃんをここまで追い込んでしまったんです。…」

 私は、叔母さんの顔が見れなかった。今の私の顔を見てほしくなかった。

 でも、それは叔母さんの一言で私は顔を見せることとなった。

 「透華さん、顔を上げてください。」

 私は恐る恐る顔を上げると、叔母さんは笑顔だった。

 「顔がくしゃくしゃじないですか。」

 叔母さんは、私の顔を拭いてくれる。

 「私ね、もし誠四郎を追い込んだ人とあったら、同じ目に会わせてやろうと思ってたの。でも、あなたの顔を見たら、嬉しくなっちゃって。あぁ、あの子は、この子も助けたんだって。」

 「ねぇ、透華さん。誠四郎の昔の話、聞かない?」

 私はこんな状況と言うのに、せーちゃんのことは何でも知りたいと思ってしまい、つい、「はい」と答えてしまった。

 私が少し息を整えるのを待ってから、叔母さんは話を始めた。

 「昔の誠四郎ってね、手に負えない悪戯っ子だったのよ。」

 信じられなかった。せーちゃんは昔から優しいのだとばかり思っていた。

 「トイレットペーパーを広げたり、テレビ見てるときにコンセント抜いたりで、それはもう大変だったの。これは将来、悪ガキになるかな~とも思ったわ。」

 今では想像もできない悪質な手口に、私は驚きしかなかった。

 「そ、そうなんですか?」 

 「えぇ、そうなの。でもね、弟が亡くなってから、変わっちゃったの。」

 私の手紙にも書いてあった。弟さんがなくなっていると。

 「弟の名前は、天心(てんしん)。とても大人しくて、優しい子で、お兄ちゃんっ子だっだ。毎日誠四郎にくっついて、誠四郎が笑うと、天心も笑って、誠四郎が悲しむと、天心も悲しんで、まるで心が繋がってるみたいだった。そんな天心を誠四郎はとても可愛がってた。」

 懐かしむように、叔母さんがリビングを見渡す。

 「でも、誠四郎が小学三年生の頃、交通事故で天心が亡くなって、目の前で見ちゃった誠四郎はその時から部屋に籠って泣くようになったの。私も、それは分かっていたけれど、天心が亡くなったことが受け入れなくて、自分のことで精一杯だった。」

 目の前で大切な人が死ぬ。あの時の私はせーちゃんのことを見ていなかったけど、それでも絶望するには十分だった。

 それを、私のように穢れのない愛情を注いでいた人が、9才程の子供が体験するのはとてもじゃないが、受け入れられないことだろう。

 「それなのに、あの子は、私よりも早く立ち直ったの。誠四郎が変わったのはその頃だったわ。最初は弟を真似るようだったけれど、少しずつ自分の人を助ける理由を持っていった。」

 ここからは、簡単に想像できた気がする。叔母さんの中のせーちゃんが、私の知ってるせーちゃんと重なった気がした。

 「弟に顔向け出来るようにって理由から、人が幸せに笑っていることが嬉しいって理由になって。あなたを幸せにしたいって理由になった。」

 私は叔母さんの話を聞いて涙を流す。

 「誠四郎にとってあなたが大きい存在であることが良くわかったわ。」

 私の口から自然に謝罪の言葉がこぼれた。

 「…なさい。  ごめん、なさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。」

 嗚咽しながら子供のように泣きじゃくる。

 「透華さんのしたことは、本当に許されるものではないと思います。でもね、償い続けることは出来ると思う。自分の行動を、見直すことは出来ると思う。だからね、その場しのぎの謝罪じゃなくて、しっかり自分のしたことを省みて、謝りに来てくれてありがとう。私はその行動に文句はつけないわ。」

  「ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 気づけば私は叔母さんに優しく包まれていた。

 それは暖かくて、心を解かしてくれるような感覚の包容だった。

 

 それは別に今回のことを許された訳ではない、私の謝罪に文句はつけないと言うだけ。それでもこの人は私を包んでくれた。せーちゃんと同じように。

 それは同時に、この優しさを私が傷つけたと言うこと。

 私の後悔と背負った罪は、より一層強くなった。

 

 

 せーちゃんを愛する権利をつかむために。

 私は私自身を決して許さない。

 

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あとがき

 私、最近この話をどうしてこう持ってきたのかと、後悔してます。だってどうやって主人公をヤンデレに持っていくか、悩みまくるからです。

 本当に私は愚かだ。

 あ、そういえば、最近昔やってた「ミルクチョコ」ってゲームにはまってます。あれ、銃ゲーでも、ギガあまり食わないので助かります。

 雑談はここまでとして、今回も誤字脱字 改善点有りましたら、レビューに書き込んで下さい!

 それでは、読者の皆様、この作品を読んでくださり、ありがとうございます!では、また会いましょう!

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