第56話 雨の日の隙間
雲行きが怪しくなってきた時
県境の峠を越えるには
突然の大雨に全身を打たれることも珍しくはない
雨に晒された身体の疲労は
2輪のハンドルを握る指先にも現れる
気付にウイスキーを飲むことも許されず
ポケットの中の煙草は濡れて火を付ける事もできない
やっと見つけた木陰でテントを張り
滴る水を絞りながら服を脱ぎ
冷えた身体を寝袋で温め
ストーブ代わりのガス灯の明かりを
最大出力にして暖を取るが
朝までは保たないだろう
少なくは無い苦しみや悲しみを道連れにして
新しい光を求めて出た旅なのに
この雨の中の小さなテントの中で
このまま死ねたなら
どんなに幸せだろうかと
今夜には越える事の出来ない峠の道で
大雨の中を遠慮も知らずに
暖かい笑顔で悪魔が誘いにやって来る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます