第55話 無人駅



一人

旅をしていると

野宿する場所も見つけられない時

頼りになる場所がある


街灯だけが照らす

誰も居ない

単線の駅のベンチ


寝袋を取り出し一人眠る時

街燈にへばりつくように

羽根をばたつかせる蛾を見ながら思案する


どうして自分は此処にいるのだろうかと


自分を見つけるはずの旅が

自分を見失う旅になっているのでは


家に帰れば

あの時こそが自分であったと思うはずなのに


旅の途中は光を求めて焼かれてしまう蛾のように

光に焼かれて死にゆく自分を見てしまう時がある


明日の朝

列車が来る前に

この駅から逃げよう

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