第3話 殴り書き

私は今

山奥のレストランのテラスから下界の景色を見ている

汗をかいたグラスのカンパリソーダを飲みながら

下界から目を逸らすと手記を開いてみる

急いで書いたのか文字が判明しない

何本も線を引いて隠された文字は何を書いていたのだろう

其の時に何を思っていたのだろう

何を感じて書いたのだろう

心に探りを入れてみるが見当もつかない

急いで書いたことを後悔もするが

線を引いて文字を隠してしまった事への少しの悔しさも

もうあの時の感覚は戻って来ない


後ろでテラスの扉が開く音がする

待ち合わせていた友人がやって来た

私は笑顔で彼を迎える

何事もなかったように手記を閉じて

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