第15話 読めないんだもん!ーVer.ふぶきー

 「ほら、乗ってください。」


私が呼んだタクシーがお店まで来て私は、千鳥足のしゅんすけさんをその中に押し込んだ。


「オッケイオッケイ、ホッケイ選手!!」


これは面白うだろうと自信満々に、そうさけぶしゅんすけさん。


「もうっ!!」


私はふざける彼へ不満を表明しながら、痛くないように軽めに彼の頭を叩いた。


「どこまでです?」


運転手のご年配の男性がミラー越しにこちらを見ながら言う。

なんか警察のドラマみたいで少しカッコいいかも。


「あぁえっと、しゅんすけさん、お家は?」


私は、ほへーと惚けた顔の彼に聞く。

一瞬自分の住所を言おうとしてしまったのは秘密だ。


「え?住所ですかい?」


当然のことを聞いたはずなのになぜか驚くしゅんすけさん。


「そうです。」


え?私何か間違ったこと言いました?

私は返事をしてから間違ったかと不安になってきた。


「えぇそんな覚えてにゃいな。あっ!SNSのプロフの自分だけ見れるとこに書いてあるかも!!」


ポンと手鼓をうって、何かを思いついたように彼はそう叫んだ。


あぁ言われてみれば住所を書くスペースもあったかも。

私は確か、ネットは怖いからって書かなかったんだっけ。


「本当ですか?」


私は彼に確認のためにそう尋ねるが、


「うん。ちょっとまっ寺小屋」


しゅんすけさんは適当なギャグを言ってごまかした。


「………私もう突っ込みませんからね。」


私は少しうつむきながら言う。

ちょっと、ほんのちょっとだけ面白いなと思ってしまった。


「あったあった!………ねぇ、ふぶきちゃん。」


しゅんすけさんが取り出したスマホの画面を私に向けて呟いた。


「は、ハイなんでしょう?」


やはりいきなり名前を呼ばれるのにはなれなくて、少し驚いてしまった。


「これなんて読むん?」


スマホの中央をさしていうしゅんすけさん。

…………それぐらい、読みましょうよ。


私はちいさくため息を付いた。

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